【大人の群馬旅】センスのいいディスプレイも必見。“古風な気品”のあるアンティーク店
豊かな風土に彩られた日本には、独自の「地方カルチャー」が存在。そんな“ローカルトレジャー”を、クリエイティブ・ディレクターの樺澤貴子が探す本連載。この夏向かったのは、近年アートの街としても注目が集まる群馬県前橋市。つい急ぎ足になりがちな日常を、一度立ち止まって見つめ直したい──そんな気持ちになるアンティーク店を訪ねた 【大人の群馬旅】前橋で非日常に浸るブックショップ
《BUY》「ラトリエ ブロカント」 “古風な気品”が教えてくれる暮らしの慈しみ
飽和状態のモノに囲まれた日々の暮らしを見渡すと、大なり小なりの縁あって手元へと巡り合わせた道具に囲まれていることに、ふと気づく。幼少期にサンタクロースから届いたオルゴールや、夫と暮らしはじめた20年ほど前に近所の器店で見つけた小鉢、この連載の旅先で拾った不思議な形の石まで。普段は意識すらしないモノを改めて愛おしく見つめることを教えられたのは、前橋の住宅街の一角で店を構える「ラトリエ ブロカント」でのこと。店を営むのは、フランコジャポネ夫妻のトニー・デュランさんと石井れい子さん。18~19世紀に腕のいい職人たちが丹念に作り上げ、何処かの誰かのもとで大切に時間を重ねたフランス製のアンティークの道具や家具、オブジェが心地よく集う。
鏡の中の世界を逍遥するように、時代を重ねた道具には不思議な気配が漂う
“店”というより、ふたりの家に招かれたよう
シャイなトニーさんと、湖のように穏やかなれい子さん ノルマンディ地方のルーアン出身のトニーさんとれい子さんの出逢いは1999年、ともに学生時代を過ごしたイギリス。帰国後、れい子さんは、兼ねてより関心のあった日本の古き美しきものを商いとする。「子どもの頃から建具職人だった母方の祖父に連れられ、神社仏閣を訪れては宮大工の仕事を眺めていたため、職人が心を注いだモノに惹かれるように。けして高価ではないけれど、家のなかには母が飾った古い道具類が生活に溶け込み、蚤の市へ出向くことも日常でした」。2001年にトニーさんが来日し、結婚を機にフランスへ行く機会が増えると、彼の地の古いものに目が留まるようになったことは自然な流れである。