ゲストハウスは「生き方」。だからぶれない──苦境に向き合うオーナーたちの知恵【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスで影を潜めたものの一つが「旅行」だ。中でも、この10年ぐらいで増加した小さな宿、ゲストハウスが苦境に立たされている。オンラインイベントやシェアハウス化など、さまざまな知恵で乗り切ろうとしている。鎌倉と沖縄、二つのゲストハウスオーナーに取材した。(取材・文:鈴木紗耶香/Yahoo!ニュース 特集編集部)
コロナ前から競争激化で厳しく
鎌倉の中心地から外れた材木座の閑静な住宅街にある、ゲストハウス「亀時間」。築94年の古民家は手入れが行き届き、清潔感がある。個室とドミトリー(相部屋)、合わせて定員は12人。1階のラウンジは、週末限定でカフェバーとしても営業する。 5月半ば、オーナーの櫻井雅之さん(47)は、宿を始めて以来の「ワンオペ営業」をこなしていた。3人のスタッフには休みを出した。その後カフェの営業を再開し、担当の1人が復帰したが、以前の賑わいにはほど遠い。櫻井さんは言う。 「実は、コロナウイルス・パンデミックの前から経営が難しくなってきていました」
櫻井さんは2011年4月に「亀時間」をオープンした。東京から日帰りできる鎌倉市は、観光客数に対して宿泊客数が少ない。櫻井さんは、あえて「鎌倉に泊まる」ことが贅沢な体験になると考え、材木座に古民家を借りた。 そのころ、地域の日常に近い体験ができるゲストハウスが全国に増え始めていた。一足先にオープンした「鎌倉ゲストハウス」の人気と相まって、「鎌倉に泊まる」旅は愛好家の支持を集めた。 ところが、2016年ごろから潮目が変わり始めた。日本でも民泊が本格稼働し、価格競争が激しくなった。去年、都内でも1泊2000円を切る宿が登場した。 「価格破壊ですよ。そこへ(消費税)増税でしょう。それでそもそも、この冬は過去最悪になるぞと思っていて」 それでも、年明けは例年より若干少ない程度の客足だった。影響が出始めたのは1月下旬。まず、春節の休みを利用して来日する中国系の旅行客の予約がキャンセルになった。続いて、その他の海外からの予約のキャンセルが相次いだ。3月に入り、国内の客にも影響が出てきた。3月のベッド稼働率は、昨年の74%に対して、今年は28%に落ち込んだ。そして、4月は予約がほぼゼロになった。