日本人のソウルフード“おにぎり”が世界を席巻!注目の専門店と、意外と深いおにぎり蘊蓄
いま起きているのは、 ”おにぎり専門店”ブーム
冒頭でも触れたように、いまは空前のおにぎりブーム。しかし中村さんは、ブームと呼ぶには違和感を感じるといいます。 「そもそも、おにぎり自体はずっと人気の料理なんです。なので、いま起きているのは『おにぎり専門店ブーム』ですね」とのこと。併せて、トレンドの背景も教えてくれました。 「2018年に『おにぎり浅草宿六』が、世界で初めて『ミシュランガイド東京2019』のビブグルマンに『おにぎり』として掲載されました。また、同店と双璧をなす有名店『おにぎりぼんご』が行列店として話題になるなど、2010年代後半から専門店の人気ぶりが一般層にも知れ渡っていきました」 2020年になり、世界はコロナ禍へ。テイクアウトやお取り寄せが礼賛されるとともに、外食をしなくなって浮いたお金をプチ贅沢に回すように。同時にコンビニ各社も、高級食材などを使ったプレミアムなごちそうおにぎりの商品点数を増やしていきました。 中村さんはこれによって、世間のおにぎりに対する価値観が大きく変わったといいます。 「ごちそう系のおにぎりのおいしさに気付くとともに、『この値段なら専門店のおにぎりの価格とあまり変わらないよね』という考えが広がりました。 また各地で専門店が続々と開業。その多くはカウンターで提供するスタイルで、『職人による握りたてを食べたい』という未体験への好奇心が、いまのおにぎり専門店ブームにつながっていると思います」 その人気はいまや海外にも。たとえばフランスではチーズやトマトなどを使った「パリおにぎり」が流行っているそうですが、なぜいまになっておにぎりが世界へ広がっているのでしょうか。 「ひとつは、日本のマンガやアニメに登場するおにぎりを見た外国人が、『あれは何? 食べたい!』と興味をもったからです。そもそも黒い三角形の食べ物は世界では珍しく、彼らから見ると非常にアイコニック。『FENDI』がおにぎりをモチーフにしたミニバッグを発売しているくらいです」 ほかにも、グルテンフリーであることや、ウクライナ危機によって小麦が高騰しお米の価格的優位性が上がったことなども、その人気を後押ししました。また、海外でもコロナ禍が、おにぎりの浸透にとって追い風になったそうです。 「海外のデリバリーフードは、日本に比べてメニューのバリエーションが少ないので、そこに三角形のおにぎりがラインナップされているととても目立つんです。そしてコロナ禍以降は訪日外国人が増え、彼らがSNSを通じておにぎりの魅力を世界に発信してくれました」