最難関テーマ「自殺予防」と向き合う専門家 苦しみを抱える人に伝えたいこと #今つらいあなたへ
大学のメンタルヘルス支援 コロナ禍で認知向上した経験
編集部: 現在、河西教授が運営に関わっている札幌医大の保健管理センターでは、大学に所属する多くの学生・教職員から相談を受けているとのことですが、「相談しよう」という認識はどのようにして当事者へ広まったのでしょうか? 河西教授: 私が札幌医大に入職した2015年当時の保健管理センターは、非常勤の看護師が一名で、限られた時間帯に応急の保健室対応をしているだけでした。 しかし、メンタルへルス問題はそこかしこにあって、私のメールアドレスを公開して相談対応をしたり、学生のメンタルヘルス問題について困っていた教員からの相談に積極的に対応したりしながら、徐々に理解者を増やし、幹部職員の理解を得て保健管理センターが整備されていきました。 本学には大学病院がありますが、そもそも医療の業務は過酷です。また、医療者になるための学生のカリキュラムは大変過密で厳しいので、医療者も学生も日常的にたいへんなストレスにさらされています。メンタルへルス支援が最も必要な現場だと言えます。 編集部: 保健管理センターの認知を広めるための具体的なきっかけはあったのでしょうか? 津山さん: 以前は、保健管理センター自体が知られておらず、ましてや、学内に相談できる部門であることすら認識されていませんでした。知っていたとしても、保健管理センターに、何をどのように相談したらよいのかもわからないという状況でした。 しかし、その後、新型コロナのパンデミックが勃発し、医療の現場も教育現場もひっ迫した状況となり、感染症病棟の看護師のメンタルヘルス支援や、学生の感染症管理と種々の相談対応を保健管理センターが担ったことで、保健管理センターの認知度が一気に向上しました。 さらに、学生の入学時、あるいは教職員の入職時のオリエンテーションに保健管理センターが登壇して健康管理について話をするとか、企業や団体では普通に行われている管理職のためのメンタルヘルス研修をするといったことを提案しました。また、メールやLINE、WEBフォーム等など様々な経路からの相談申込みを可能にし、依頼が来たら間を空けずに対応する相談体制を作りました。 相談に来た方それぞれの悩みに丁寧に対応することを積み重ねた結果、相談をすることのメリットを感じてくれる方も増え、「あそこ行けば助けてくれるらしい」という認識や口コミが学生を中心に広がり、来談者数の更なる増加につながりました。