医師として何ができるのか? DMATの医師が語る、災害医療の現実
■様々な経験が将来、役に立っていく 災害医療の道に進むには、「この通りにやればなれる」といった決まったルートはない。 「診療科の縛りはなく、どの科の知識もどこかで役に立つので、初期研修後は好きな診療科に進めばいいと思います。とはいえ、被災地では目の前で困っている人にすぐに対処できる知識や技術が求められます。専門に選ばなくても何らかの形で救急医療は学んでおいたほうがいいでしょう」 実際に災害時の支援活動に参加するには、DMATのチームを持つ指定医療機関に勤務したり、国際緊急援助隊に登録したり、民間団体に所属する方法もある。 「NPOなどで災害医療関連の業務に専従している医師もいますが、最初から災害医療に絞り込むのではなく、まずは病院でさまざまな臨床を経験しておいたほうが現場では役に立ちます。学生時代から医療に限らず何でもやっておくといい。すべてが経験になって、先々で生きてきます」 大場医師は若い世代に「“何か役に立ちたい”という気持ちを大事にして」とメッセージを送る。 「そのためにできることは人それぞれ違いますから、手段は何でもいい。医師になるのも可能性の一つにすぎません。普段からアンテナを張って、まずは行動する。それを繰り返すことで、進みたい方向や方法はおのずと見えてくるのではないでしょうか」 大場次郎医師/1978 年大分県生まれ。2003 年自治医科大学卒業。大分県立病院、国東市民病院、大分県姫島村診療所などを経て、千里救命救急センターへ。その後、順天堂大学医学部救急・災害医学研究室准教授などを務めながら、DMAT、NPO、国際緊急援助隊等に登録し、国内外の災害医療支援活動を行ってきた。現在はDMAT 事務局で教育活動や研究を行い、災害時には現場で指揮をとっている。 (文/熊谷わこ、写真/東川哲也 [写真映像部]、JICA) ※AERAムック『医学部に入る2025』より
熊谷わこ