ビジネススキルも身につく異色サッカークラブ 公式戦には出ず屋台運営で子供の自主性育成
サッカーだけでなく、夏祭りでの屋台運営を通じてビジネスを実践的に学ぶことができる異色の少年サッカークラブがある。岡山市中区を中心に活動する「FC GranSeed(グランシード)」。「教育と普及」に特化し、大会での勝利といった結果のみを追わず、楽しんでプレーしてもらうため、公式戦にはあえて出ない。代表で監督を務める佐々木祐介さん(35)は「サッカーの上達とともに、子供たちが社会に出てから役に立つこと、人間的な成長を応援できるよう全力を尽くしたい」と語る。 【写真】夏祭りに出店した屋台。くじ引きやダーツ、輪投げなどの屋台を子供たちが営んだ ■ほめて伸ばす クラブには未就学児から小学生まで約130人が在籍し、拠点の岡山市立幡多小学校のグラウンドでは週2回、練習を行う。練習では一つ一つの動きに、大学の現役選手を含むコーチが「今の、いいね」と、すかさず声をかける。1つの練習が終わるたびに集合し、各コーチが「コースを読んで先に動けていた」などとほめる。 学年や本人の希望などをもとに分けられた各カテゴリー(クラス)の月間MVPを表彰するが、「練習に臨む態度や技能を伸ばすために努力した姿が評価基準」(佐々木さん)となる。 小学6年の佐伯風輔さん(12)は「あいさつをしっかり、物を大切に、といった基本的なことをサッカーを通じて教えてくれる」と喜ぶ。保護者からも「技術面の指導も充実していて楽しく続けられる」と好評だ。 ■苦い経験から 公式戦に出ないのも特徴だが、背景には佐々木さんの苦い経験がある。 ルールもよく分かっていない状態で中学のサッカー部に入部した佐々木さん。「身体能力に任せたやり方で高校で壁にぶつかった。早いうちからの基本的な技術の習熟や周囲を見渡せる広い視野、戦術眼の習得が重要だと痛感した」という。 大学時代にアルバイトで少年サッカークラブのコーチを始め、卒業後も継続。地元に戻って平成29年にグランシードを創設した。1年ほど続けたところで、「競争や勝負事が苦手な子供、自分のペースで楽しみたい子供もいるので、1つぐらいはこういうクラブがあってもいい」と考え、大会での勝利至上主義ではなく、自主性を重んじるようなクラブを目指した。 公式戦には出場しないものの、クラブ主催のリーグ戦やカップ戦を積極的に行っている。実戦経験が積め、公式戦に近い緊張感や負けた悔しさを味わえる。小学3年の古山翔琉(かける)さん(9)は「負けても気持ちを切り替え、敗因を話し合うのがためになる」と話す。