パナソニック車載電池“脱テスラ依存”の胸算用、SUBARUとマツダ向けに供給「世界二極体制」でどうなる
■テスラは自社開発済み 今後のカギを握るのは、最大顧客であるテスラの動向だ。テスラはすでに独自に4680電池の開発に成功。同社が2023年に発売した「サイバートラック」に搭載している。 当初は4680電池の量産に苦戦したものの、今年7月の決算説明会では同社のラース・モラヴィ副社長が「第1四半期(1~3月期)に比べて生産性が大幅に改善、売上原価も飛躍的に減少した」と説明。さらに「現在は1週間にサイバートラック1400台分以上の4680電池を製造できている」(同前)と明らかにした。年換算では約6万台分になる。
ただ、テスラのイーロン・マスクCEOが掲げたサイバートラックの年間の販売台数目標は約25万台。今後さらに生産効率が上がっても、自社だけですべてをまかなうのは難しい。 そのため、どの電池メーカーが足りない分の電池を供給するのかが注目されている。 パナソニック エナジーの只信一生社長は、メディアの合同取材に応じ、自社の4680電池の性能について「(テスラを含む)他社が開発しているものより10%程度性能が高い」と自信をのぞかせた。
テスラがパナソニック製の4680電池を広く採用すれば、他メーカーに先駆けて量産車に搭載された電池として、大きな実績になる。最大手のテスラにさらに食い込むことで、アメリカ市場の攻略を狙う。 ■国内事業を「第2の柱」に 最新の電池でアメリカ市場を攻める一方、国内でも生産能力の拡大にメドをつけた。既存の工場などからの供給も合わせると、パナソニックはSUBARU向けには年20ギガワット時、マツダ向けには年10ギガワット時を将来的に供給する。
アメリカ・ネバダ州にあるテスラ向けの工場(生産能力は年間約40ギガワット時)には及ばないものの、国内向けだけでEV約60万台分の電池に相当する規模になる。パナソニックにとっては国内事業がテスラ向けに次ぐ2本目の柱となる見通しだ。 国内自動車メーカーとの協業強化はパナソニックにとっても悲願だった。以前から課題と指摘されてきたテスラ一本足からの脱却を意味するからだ。 昨年度、アメリカのIRA(インフレ抑制法)に基づく補助金の対象外となったことなどからテスラの一部車種の販売が急減。パナソニックはこのモデル向けに電池を出荷していた大阪・住之江工場の生産を大幅に絞り込むこととなり、業績にも影響が出た。