近所に「ごみ屋敷」が出現したらどうする!?こんな人はごみ屋敷予備軍です【ごみ屋敷清掃芸人・柴田賢佑さんに聞く】
近所にごみ屋敷が出現したらどうする?
前回でも触れましたが、ごみをごみじゃないと主張する、捨てさせないごみ屋敷も存在します。家や庭にごみが山積みされ、悪臭や虫・ねずみの発生、放火の危険性などがあり、近隣住民にとって大きな悩みとなります。 もし、近隣にごみ屋敷が出現してしまったら、どう対処すればよいのでしょうか。 「こうしたケースはごみ屋敷の住人と近隣住民とのコミュニケーションが取れていないことが多く、迷惑をこうむっている近隣住民は怒りを感じているでしょうし、文句を言われるごみ屋敷住人も敵意を持っているかもしれません。直談判するのはかなり危険で、悪化する可能性もあるので避けた方がいいでしょう。 絶対ごみだと言わないタイプの人たちは、ごみを撤去しようとすると“盗まれている”と思ってしまうので、敷地の外にはみ出たごみを撤去してしまうとトラブルになりかねません。実害が出た段階で、集合住宅なら管理会社や大家さんに相談する、もしくは行政に通報するのが無難ですね」 環境省による、全国1,741市区町村を対象にした『令和4年度 「ごみ屋敷」に関する調査報告書』では、行政が認知しているごみ屋敷の件数は5,224件、うち改善されたのは2,588件にとどまっています。 「“ごみ屋敷条例”が制定されるほどですから、ごみ屋敷は様々な弊害があるということです。数は今後も増えていくと思います。室内のごみ屋敷で住民からの通報がないこともあるでしょうし、僕が勤務している会社でも多いときは月に3~4件のごみ屋敷掃除の依頼がありますから、環境省の数字よりも実態はもっと多いと感じます」
ごみ屋敷にしない・させないために心がけるべきこととは?
ごみ屋敷にしない、ならないためにはどうしたらよいのでしょうか。人それぞれに事情があるので、すべてには当てはまらないと前置きしながら、第三者の目が入ることで変わるのではないかと柴田さんは考えています。 「多くの場合、ごみ屋敷化にはきっかけが存在します。ごみ屋敷になる前にそこに気づけるかどうかが重要になってくるんじゃないかなと思います。 例えば、離婚してしまった、伴侶と死別してしまった、リストラされたなど、気を落としたまま生活を送っているうちに、気づくとごみ屋敷になってしまっていることもあります。 もし友人が離婚したと聞いたら、連絡してあげて欲しいですね。“ちょっと家行っていい?”みたいな軽い感じで水を向けてあげる。“こんなところに呼んで大丈夫かな”と、他者の目が入ることで片づいていない今の状態を把握できるんです。訪問したときに“また来るわ”と次回の約束をしておけば、家をきれいに保っておこうと気力が生まれます。 一人暮らしの高齢者も同じです。午前中に買い物に行ったけど午後にも行っている、同じことを繰り返して話すなど、気になったらご近所さんや訪れた家族が声掛けしてあげましょう。 どうしても一人になりがちな人でも、周りの気づかいによって、早い段階で対応できる可能性もあります」 ごみ屋敷清掃の体験をつづった著書『ごみ屋敷ワンダーランド』(白夜書房)は、「最近つらいな」「ストレス溜まっているな」など、今の自分に不安を抱えている人に読んでもらいたいと柴田さんは言います。 「自分は専門家ではないので精神面の分析はできないですが、ごみが家じゅうに溜まっている状態は普通とは言えません。でもごみ屋敷化した背景には、先ほど話したように、なんらかのきっかけがあります。 メディアはごみ屋敷の住人を常識が通じないモンスターのように扱うことも多いですが、今の自分が不安定な状態のとき、普通の生活をしていても、知らないうちにごみ屋敷化してしまう可能性があると思います。 つらい状況なら、引っ越しをする、仕事を辞めるといったなにかの転機があれば、ごみ屋敷から抜け出せる可能性もあります。僕の本を読んで、そうしたきっかけを見つけてもらえればうれしいですね」 書著の中には、ごみ屋敷清掃はリピーターが多いという話と同時に、ごみ屋敷から抜け出し、その後ずっときれいな部屋を維持することができた女性のエピソードが紹介されています。彼女がごみ屋敷を克服したのは、柴田さんたちのような親身にアドバイスしてくれる清掃業者と出会えたからかもしれません。 次回は、ごみ屋敷だけでなく、生前・遺品整理で家の片づけを頼む際、失敗のない業者選びのノウハウを紹介します。 取材・文/阿部純子 撮影/横田紋子(小学館)