U-19日本代表に”多国籍”の異色逸材…前田ハドー慈英と高橋センダゴルタ仁胡
大きく遅れていた状況を変える目的も込めて、2020年10月にドイツ・デュッセルドルフに設置されたのがJFAのヨーロッパオフィスだった。 A代表の森保一監督がヨーロッパを視察した際に拠点とするなど、五輪世代を含めてヨーロッパ組が増えた状況下で前線基地的な役割を担うヨーロッパオフィスだが、反町技術委員長は「そうした活動だけをしているわけではない」と言う。 「アメリカや南米にもいますけど、特にヨーロッパでの発掘作業ですよね。情報網を張り巡らせて、アンダーカテゴリーのそういう選手をいち早くキャッチして実際に見にいって話をする。そしてプレーしている映像をわれわれの方にも送ってもらう。これがJFAのヨーロッパオフィスができた背景のひとつでもあるので」 現在はJFAのフットボール本部強化育成部の津村尚樹氏が、ヨーロッパオフィスダイレクターとして駐在。ヨーロッパ組のフォローや各所属クラブとのパイプ作りに奔走しながら、アンダーカテゴリーの多国籍選手に関する情報も収集してきた。 リストに上がった選手は、他のカテゴリーや女子も含めて数十人にのぼる。そのなかで前田と高橋が招集された経緯を、反町技術委員長はこう説明する。 「本人の意向もしっかり確認した上で、日の丸を背負ってプレーしたい、という気持ちを大事にして、その上で見合うような実力があるのであれば代表で刺激を与えていこうと。みなさんは『バルセロナの選手が選ばれた』と書くでしょうけど、所属チームで選んでいるわけでも、海外組だからといって優遇しているわけでもない。映像を見て『これならば国内の選手を選んだ方がいい』となったのも大勢いる。もちろん実力主義です」 なかには日本ではなく、別の国籍の代表チームを選んだ選手もいるかもしれない。選手の側にも選ぶ権利が生じるだけに、戦略的な発掘が求められてくるわけだ。 身長178cm体重71kgの前田は香港で生まれ育ち、香港のクラブでプレーした後に13歳でブラックバーンの下部組織に加入。エネルギッシュに上下動を繰り返す右サイドバックとして台頭し、昨年8月にはU-23チームでも“飛び級”でデビューしている。 身長173cm体重63kgの高橋は、幼いころに家族とともにアルゼンチンから亡命した父親と日本人の母親を持ち、両親が出会って結婚したスペインのバルセロナ郊外で生まれ育った。ゆえにアルゼンチン、スペイン、日本の国籍を持っている。 5歳でフットサルを、10歳でサッカーをはじめた高橋は、14歳になる直前の2019年7月にバルセロナの下部組織に加入。日本代表MF久保建英(20、マジョルカ)に続く日本人で2人目の快挙は、当時のNHKのニュースでも報じられた。 主戦場の左サイドバックでゲームメイクにも積極的に関わるプレースタイルの高橋は、ニュースの映像内でも利き足の左足を駆使した巧みなボールタッチを披露。将来の夢を問われると、しっかりとした日本語でこう答えている。 「なりたいのは日本代表です」