「賃金上がらず」「倒産過去最多」看護・介護現場で“今”何が起きているのか? 第一線で働く「ケア労働者」が訴える現場のリアル
無資格者が看護を行っているケースも
宣伝行動では、第一線で働く看護師や事務職員も車上から現状を伝えた。 全日本赤十字労働組合連合会(全日赤)の中央執行委員長も務める看護師の五十嵐真理子さんは、新型コロナウイルス感染症の患者対応に今もあたっていることに触れ、こう語った。 「今でも、隔離や感染対策をしながら看護にあたっている。(人手不足の中)外来から病棟、病棟から外来の勤務など、慣れない業務であっても、事故が起きないようにしながら頑張っている。看護師の欠員がある病院では、病棟を再編したり減らしたりしている。病床数が減ることで、入院できる患者さんが減ることにつながり、病院の経営もますます厳しくなっている。将来への展望を持てず、退職者が続き、7月に入った新人でさえ転職サイトに登録している」 東京医労連に所属する病院事務職員の長井海雄(みお)さんも、低賃金による深刻な人手不足を訴えた。 「どの現場に行っても人が足りない、という話を聞く。お昼休みもほとんどとれないまま一日中立ちっぱなしで働いている看護師や、16時間という超長時間夜勤を仮眠もとれないまま行っている看護師もいる。なぜ人が足りないのか、それは賃金が安いから。(6月から)ベースアップ評価料をつけていただいたが私の場合、月に4200円だ。これでは1か月分の米代にもならない」 また、宣伝行動に駆け付けていた都内の病院で働く看護師Aさんは筆者の取材に対し、「夜勤回数が多い。3交代で12回、2交代で6回、(ひと月に)働く20日のうちの半分は夜勤。コロナの後、再診サイクルの見直し=1か月から3か月=などによる受診離れもあって患者さんが戻っておらず、経営はどこも赤字。支出の抑制があり、時間外勤務を(日報等に)書かせてもらえないこともある」と語った。 さらに、「ベッドサイドでケアすることでやりがいも持てるが、人手不足でそうしたことができていない。本当の意味でのやりたい看護ではない。看護師から看護助手への業務委譲も行われ、白衣は着ているけど有資格者ではない、ということもある。それは非常に危険な状態だと思う」と危機感を訴えた。