アデルやプリンスもNO! NGアーティスト連発の中「トランプ愛用」の出囃子、バイデンやハリスのお気に入りは?
ほかにも黒人シンガー、ジャッキー・ウィルソンの『Higher And Higher』(1967年)や、黒人グループ、ステイプル・シンガーズの『We The People』(1972年)、イギリスのバンド、コールドプレイの『A Sky Full of Stars』(2014年)、そしてプエルト・リコ系のルイス・フォンシの『Despacito』(2017年)など、さまざまなジェンダー、年代、人種の歌い手による「多様な」楽曲群を用いてきたことは印象深い。
一方のハリスは、バイデンの撤退後いち早くビヨンセの『Freedom』(2016年)を自身のキャンペーン・ソングに据えると発表した。サイケデリックなシンセと推進力のあるドラムが印象的なこの曲は、ラッパーのケンドリック・ラマーをフィーチャーしている。 この『Freedom』が収録されているアルバム『Lemonade』は、ビヨンセの個人的な葛藤にとどまらず、黒人としての社会的不平等を訴える内容で評論家からも大きな評価を得た。ビヨンセの研究で知られる学者のオミセイク・ティンズリーはこのアルバムを「黒人フェミニズムのリミックス」と評した。
ビヨンセ自身も本作を通した政治的な発信に意図的で、2018年のコーチェラ・フェスティバルの際には『Freedom』の直後に、「黒人の国歌」とも呼ばれる『Lift Every Voice and Sing』を歌い上げた。 のちに『Freedom』は2020年のBLMの際にも積極的に歌われ「黒人」をユナイトする楽曲として用いられてきた。『ローリング・ストーン』誌は「ビヨンセのキャリアの中でもっとも印象的な政治的発信」と述べた。
■「女性」「黒人」としてのアイデンティティを表明 こうしたきわめて「政治的」で「女性的で」「黒い」曲をカマラ・ハリスが今回のキャンペーンに用いたことは興味深い。「女性」として、また「黒人」としてのアイデンティティを表明する姿勢を体現する『Freedom』はハリスの選挙戦略をクリアに表している。 そしてそれは、見方を変えれば、バイデンの弱点とされていた「黒人層」「女性」「若者」の票を獲得するねらいがあるようにも見て取れる。