『あらしのよるに』の作者きむらゆういちが、『からっぽのにくまん』のまつながもえとコンビを組んだ絵本『ふしぎなみけねこびん』の創作秘話
●きむら ロボットっていうより、ぬいぐるみみたいな感じはあるね。 でもぬいぐるみでも良いよね。読む子は男の子とも限らないならね。車がプレゼント、案内するのはぬいぐるみ、でも良かったなとも思うね。 ●まつなが ねこロボットはねじまき式なんです。 ●きむら ほんとだ! ぜんまい式なんだね。 ──こういったところが、お話の広がりを感じさせていただけるところですね。ところで、このみけねこびんの“みけねこ”は、何だと思われますか? 不思議な存在なのか、はたまた顔があるので誰かなのか? というところは気になるところかと思うのですが……。 ●きむら 書いたときの設定として、飼い猫のみけが姿をかえたと思って書きました。 ●まつなが そうですね。わたしはお母さんかなと思ったんですよ。「ぼくの大好きなケーキ」のところで、これはお母さんが作ったケーキだと思ったので、ロボット自身はお母さんとミケのイリュージョンかなぁと……。 ──ミケだと思って読む人もいれば、もしかして違うのかも? と思って読む人もいる。お話から想像がふくらみますね。 ●きむら 読者がどうとらえるかは違うってことだね。それもいいね。 ──まつながさんにおうかがいします。今回、絵本の絵だけを描かれたというところで面白かったところはありますか? ●まつなが 作と絵の両方だと自分の好きなものばかりになるので、今回のように作と絵が異なると、新しい世界に連れていってもらえるというのがあります。この絵本では、自分の世界が広がった感じがあります。 ●きむら そうですね。絶対に自分では描かない絵を描くことになるもんね。 ──文と絵で違う方が描かれる絵本では、作絵を一人の方が描かれる絵本とは、また違った魅力が出てきますね。そんなお二人に、絵本づくりにあたっての心がけ、こだわりのポイントなどを教えていただけたらと思います。 ●きむら 日常と非日常、いかにもありそうな日常から始めて、それから非日常につなげていくこと。無理なく飛躍していくこと。いきなり宅急便がきて連れていくのではなく、全部ありそうでありながら、違う世界にいくところにこだわっています。 一番問題なのは、話を広げてどう終わらせるかなのだけど、今回はいちばん簡単な「電池切れです」にしました。そこまで、いかに自然に非日常へもっていくか。そこを考えておはなし作りをしています。 ●まつなが 私は、絵本は一度読んでおしまいではなく、何回も読んでもらえるようなものになってほしいと思って作っています。なので、読者には伝わらないかもしれないけれど裏設定を作っています。今回なら、みけねこカーは動物たちには見えているけれど、人間には見えていないという裏設定を作ってあります。町のシーンで、人間は気づかないけれど、猫や犬は気がついているように描いています。何度も読み返す子なら気がつくかもしれないけれど、気がつかない子がいてもいい。でもそういう裏設定を作ると、なにか理由があって描いてあるという思いが込められるかなと思っています。 ●きむら なるほど、みけねこカーが動物たちには見えているということに、ぼくも初めて気がつきました。 ●まつなが この町のシーンは犬がいっぱい。みんな犬を連れているんです。 ●きむら ほんとだ。すごい。 このシーン以外にもおもちゃやお菓子もよく考えているよね。普通そんなにいろいろ思い浮かばない。おもちゃも世の中はキャラクターものが多いから、キャラクターを入れず描いていてすごいよね。