じつは「汗の量」は民族によって変わる…「日本人」と「暑い地域の民族」の汗のかき方の違い
「心身の不調は自律神経が原因かもしれない」「自律神経のバランスが乱れている」などとよく耳にします。そもそも、自律神経とはどのような神経なのでしょうか? 簡単に言えば「内臓の働きを調整している神経」。全身の臓器とつながり、身体の内部環境を守っています。自律神経に関わる歴史的な研究を辿りながら、交感神経・副交感神経の仕組みや新たに発見された「第三の自律神経」の働きまで、丁寧に解説していきます。 【写真】ついにわかった「ジムに行かなくても体力がつく」すごい方法 *本記事は『自律神経の科学 「身体が整う」とはどういうことか』を抜粋・再編集したものです。
水っぽい汗と脂っぽい汗
ドライアイの患者さんが、涙を分泌させるピロカルピンという薬を使いたがらない話は前章で少し触れました。副作用として汗をかき、不快に感じるからでしたね。涙や唾液の分泌を促すピロカルピンが、なぜ汗も出すのでしょう? その秘密は神経伝達物質にあります。まずは汗腺の仕組みから説明しましょう。 汗を生成、分泌する器官を汗腺といいます。汗腺は皮膚の真皮という部分にあり、そこから細い管を通って、皮膚の表層に開いています(図3-1)。顕微鏡下で皮膚の表層をみると、汗がふつふつと水滴状に湧いて出るのがわかるでしょう。 ニオイのもとになるなど嫌われがちな汗ですが、汗は体温調節に欠かせません。体内で生じる余分な熱を、汗は水分の蒸発という形で皮膚から逃がしているのです。汗1で逃がせる熱量は0・6キロカロリーくらい。体重にもよりますが、100の汗をかくと、体温はおよそ1℃下げられます。暑い夏だと屋外を10分も歩けば、このくらいは下げられるでしょう。そうやって汗をかくことで熱を逃し、私たちは熱中症にならずに済んでいるのです。 汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺があります。体温調節に重要なのはエクリン汗腺のほうです。エクリン汗腺はほぼ全身の皮膚にあり、水分を多く含んだ汗を分泌しています。 暑いとき、私たちは全身に汗をかき、無意識のうちに体温調節を行っています。でもウマなど一部の例外を除けば、動物は人間のようには汗をかきません。ほとんどの動物の全身にはエクリン汗腺がないからです。イヌやネコは、足の裏にのみエクリン汗腺があります。暑いときにイヌがハアハアと喘いでいるのを見かけたことがあるかもしれません。彼らは息を吐くことで熱を逃がしているのです。 アポクリン汗腺のほうは、ヒトでは腋窩や外陰部などにあり、図3-1のように管は毛根部に開いています。アポクリン汗腺は性ホルモンの影響を受け、脂っぽい汗を出しています。その汗が細菌によって分解されると、特有のニオイを発生させるのです。 通常は汗腺といえばエクリン汗腺のほうを指します。本章でもエクリン汗腺について話を進めましょう。