日本の排出削減目標案は「1.5℃目標」に整合せず、国内外から批判相次ぐ
■野心的な目標を求める声は海外からも
日本に対して野心的な気候目標を求める声は海外からも届く。海外の気候科学者や経済科学者ら39人は11月29日、日本に対し、パリ協定の1.5℃目標に整合した、野心的な目標の策定を強く求める声明を出した。 声明には、ビル・ヘア氏(クライメート・アナリティクスCEO兼上級科学者)、アンダース・レバーマン氏(ポツダム大学教授兼ポツダム気候影響研究所長)をはじめとする複数のIPCC執筆者のほか、世界的にも著名な気候科学者、気候政策専門家、経済学者らが名を連ねる。 各国でNDCの策定が進む中で、海外の有識者らがこうした声明を出すのは、日本だけが対象ではない。しかし特に日本は、G7の一国として、2035年までに日本の基準年である2013年比で約80%の排出削減を達成する、野心的な枠組み提示を求めた。 海外の有識者らはG7各国が先頭に立って野心的な目標を示すべきだと考える。パリ協定の第2条にも、先進国は、絶対量で削減目標に取り組むことによって引き続き先頭に立つべきとの規定がある。 現時点でG7の中でNDCを発表したのは英国のみだ。11月にアゼルバイジャンのバクーで開催されたCOP29で、英国が2035年までに81%削減を目指すという目標は、野心的な目標として受け止められた。
■「今」が重要な背景は
今、世界が1.5℃目標を達成する可能性は遠のきつつある。2024年は、史上最も暑い年となった2023年を上回る見通しだ。2024年単年で見ても、1.5℃を超えてしまいそうな状況だ。過去17カ月の平均では、気温上昇はすでに1.6℃に到達している。 これ以上の気温上昇を食い止めるために、今すぐにでも欠かせないのが温室効果ガス(GHG)排出量の削減だ。日本として、どれだけのGHG削減をしていくのか。 2050年のネット・ゼロ(排出量実質ゼロ)を達成するための道筋を示し、2035年までの国別削減目標NDCの提出期限が2025年2月に迫る。 パリ協定では、世界の気温上昇を産業革命前の水準から「1.5℃以内」に抑えることを目指す。 2015年のパリ協定の合意の際は、平均気温の上昇を「2℃未満」に抑制し、「1.5℃以内」への抑制は努力目標だった。しかし「2℃」と「1.5℃」とでは、気候が与える負のインパクトの差が非常に大きく、2021年に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)以降は「1.5℃」が事実上の目標となっている。 2022年のG7首脳会議でのコミュニケでも、「1.5℃目標」は20回以上繰り返されるほど、重要な国際合意だ。