日本は韓国を見習え!トランプ2.0見据え米国産原油の輸入拡大が重要な理由
■ 韓国は中東依存度をしたたかに下げている JPモルガン・チェースは「OPECプラスが生産抑制を継続しても、原油価格は来年にかけてバレル当たり60ドル台で低迷する」と予測している。「トランプ政権の誕生で原油価格は60ドル割れする」との見方も出ている。 12月5日付のウォール・ストリート・ジャーナルが「サウジ、石油市場で支配力弱まる」と題する論説記事を配信したように、サウジアラビアが主導するOPECプラスは2022年から世界の原油生産の約6%に当たる減産を続けているが、その効果はめっきり薄れている。 サウジアラビア政府が11月26日に承認した2025年予算によれば、同年の財政赤字は1010億リヤル(約4兆円)となる見通しだ。サウジアラビアの財政が均衡する原油価格はバレル当たり100ドル前後とされており、原油価格が低迷する状況が続けば、サウジアラビア政府が今後苦境に陥る可能性は十分にある。 中東産原油の供給途絶は幸いにも生じていないが、同地域の緊張状態は続いたままだ。 このような状況下で日本の10月の原油輸入の中東依存度は前月比5ポイント増の97.8%となった。米国からの輸入の減少(5ポイント減)が主な要因だ。過去最高水準の中東依存度を低下させるためには米国産原油に頼るしかない。 筆者は「韓国を見習って米国産原油の輸入を増加すべきだ」と考えている。 政府が輸送費の一部を負担する(予算規模は年間約200億円)ことが功を奏して、韓国は今やアジア地域における米国産原油の最大輸入国となっている。韓国の原油輸入における中東依存度は10年ほど前には85%程度だったが、米国産原油の増加などで今年1~10月には70.9%にまで低下している。 サウジアラビア政府から「不当な支援を行っている」と抗議を受けながらも、韓国政府は「トランプ関税」を回避する目的から米国産原油のさらなる購入を検討している。 原油の安定供給のため、日本政府も本腰を入れて対策を講ずべきではないだろうか。 藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー 1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
藤 和彦