企業の新規株式公開伸び悩む…5年ぶり90社割れ、大型上場目立ち新興・中小は見送り
企業の新規株式公開(IPO)が伸び悩んでいる。今年は歴史的な株高を追い風に大型上場が目立ったこともあり、新興企業や中小企業が上場を控えたとみられる。新興市場が低迷しているほか、一般市場よりも上場基準が緩いプロ投資家向けの市場を選ぶ企業が増えていることも要因とみられる。(佐々木拓)
日本取引所グループ(JPX)によると、国内の証券取引所に今年新規公開した企業は、前年より10社少ない86社で、5年ぶりに90社を下回る見通しだ。
今年は日経平均株価(225種)が年初から急上昇し、2月にバブル期以来34年ぶりに史上最高値を更新。7月には4万2000円台をつけ、投資家の関心は大型株に向かった。
株高を背景に、初値の時価総額が1000億円を超えた大型上場は6件に上り、10月に上場した東京メトロは9470億円で今年最大だった。今月18日にプライム市場に上場したキオクシアホールディングスの時価総額は7762億円だった。
新興企業の多くが上場するグロース市場の新規上場数は64社で、前年とほぼ横ばいだった。しかし、同市場の株価指数は3年前の約5割の水準に低迷している。小規模な企業が多く、投資家の注目が集まりにくいとされ、東京証券取引所の担当者は「十分な資金調達ができないと判断して上場を見送る企業が多かった」と話す。
東証はグロース市場の魅力を高めるために、時価総額などの上場維持基準の引き上げを検討している。ただ、三井住友DSアセットマネジメントの金子将大氏は「上場維持のプレッシャーを避けようと、IPOを諦める企業が増える可能性がある」と指摘する。
大型上場が相次ぎ、中小企業が多いスタンダード市場の新規上場数は13社で前年の23社から4割減った。
IPOが伸び悩むとはいえ、企業にとって上場により資金や人材の確保が見込める。東証のプロ投資家向け市場「東京プロマーケット(TPM)」に今年上場した企業は前年より18社多い50社に達し、8年連続で過去最多を更新した。5年前に比べて約5倍に拡大している。