企業の新規株式公開伸び悩む…5年ぶり90社割れ、大型上場目立ち新興・中小は見送り
TPMは、一般市場で上場の要件となる市場に流通させる株式数や比率といった数値基準がなく、決算短信の四半期開示も任意となっている。企業は少ない負担で知名度や信用力の向上が期待できる。
今月16日にTPMに上場したハウスメーカー「ハウジング・スタッフ」(松江市)の平儀野好美社長は、「グロース市場は上場維持のハードルが高い」と話す。TPMに上場して投資家向けの広報体制を整える考えだが、市場の売買量が少ないため、いずれ一般市場への上場を目指すという。
TPMでの売買が少ないことについて、JPXの山道裕己(やまじひろみ)最高経営責任者は13日の記者会見で「環境をどう改善していくか議論が必要だ。(上場企業の)数ばかり増えることは、必ずしもいいことではない」と話した。
ナスダック目指す日本企業は増加
一方で、世界最大級の株式市場である米ナスダック市場を目指す日本企業は増えている。ナスダックによれば、くら寿司の米国法人や湘南美容クリニックの運営会社など、日本勢は現在12社が上場する。いずれも2019年以降で、今月11日には暗号資産(仮想通貨)交換業コインチェックグループが上場した。
上場まで約3年かかるとされる日本に対し、ナスダックでは上場前にそれほど詳細な事業計画を求められないこともあり、半年で上場が認められる場合もある。世界中から投資家が集まり、多額の資金調達も可能だ。
ただ、弁護士費用など上場に関係するコストは高額だ。上場後に株価が伸び悩み、上場廃止に追い込まれる日本勢も出始めている。
それでもナスダックに上場する全企業の時価総額を基に算出するナスダック総合指数は過去10年で4倍に増え、日経平均株価の2倍を上回る。人口減少が続く日本を離れ、米国市場を目指す動きは今後も広がる可能性がある。(ニューヨーク支局 小林泰裕)