ネットミームが選挙結果を左右する、「笑い」が誤情報・偽情報拡散の「武器」に
ミームはすでに武器として使われている
■有権者がニュースを受け取る方法の変化 現代社会では多くの人がSNSをニュースや各種情報の主な情報源としており、ミームは短いメッセージを発信する有効な手段となり得る。ただし、そこには誤情報や偽情報が含まれている可能性があり、詳細を簡明にまとめているどころか、事実を誤って伝えるおそれがある。 「ここで、各個人のメディア消費習慣が影響を左右する」とポワリエは指摘する。「SNSで断片的な情報をつまんで拾っているだけで、より詳細な情報源にあたって裏取りをする習慣がない人の場合、ミームが選挙における投票行動を決定する材料になる」 同様に、ミームは簡潔にストーリーを伝える一方で、感情に左右されることもある。多くのミームはユーモラスだが、必ずしもそうとは限らない。 「SNSを主な情報源として利用する有権者が増えている中で、大半の人はニュースとおもしろおかしいニュース解釈が混ざったフィード(タイムライン)をスクロールして眺めており、ミームを見たときに想起されるポジティブないしネガティブな感情の影響を受けずに済むとは考えにくい。その影響は、ニュースとおもしろいネタと友人の愛犬の話題がごっちゃになったあやふやな何かになる」とブライアント大のロウレットは補足する。 「それがニュースよりも強い影響力をもっているとは思わないが、ニュースに対してもともと抱いていた心情を補完する効果はある」 ゆえに、ミームは政治的な分断を助長してしまうおそれがある。主張や信条の異なる相手を笑い飛ばすのは簡単だが、人は自分たちが標的とされることに対してはそれほど耐性がないことをSNSは証明している。 「分断がミームの目的だと言えるかどうかは、誰が作成し、誰が共有しているかによる」とロウレットは続けた。「物議を醸してネット論争をあおるためにミームを共有する人もいれば、ユーモアを通じて同好の士と交流する場を見つけたい人も多い。いずれにしても、誰一人として説き伏せられないネット論争によって分断を生むか、自分と同じ意見をもつ人々の話だけ聞いてエコーチェンバーを強化するかのどちらかだ」 SNSにおけるミームは武器と化すことがあり、実際、すでに武器として使われている。 「多くの政治的ミームが目的としているのは、同じ考えの人々を楽しませ、反対意見を持つ人たちを苛立たせることだ。題材とした問題について見解を異にする相手との溝を埋めることではない。ミームがそれぞれのエコーチェンバーの中で反響を繰り返していると、議論はかき消されてしまう」とビジネスワイヤのポワリエは警告する。