月収50万円だった60歳男性、退職金で住宅ローン完済!定年祝いに温泉旅行も…待ち受ける「老後破産」の現実味【FPが破産回避の方法を伝授】
「晩産化」が進む日本では、定年間近になっても住宅ローンや教育費が重くのしかかり、家計が火の車……という家庭も少なくありません。中堅電機メーカーの開発部長だった野口さん(仮名)も、そんな家庭のひとり。退職金で住宅ローンを完済したところ、貯蓄がゼロになってしまいました。野口さんに挽回策はあるのでしょうか?ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏が解説します。 【早見表】国民年金・厚生年金「年金受取額」分布…2022年3年度末現在 2023.01.10
退職金で住宅ローン完済後、貯蓄ゼロに…老後はどうなる?
<ケーススタディ> 野口さん(仮名)は、中堅電機メーカーの開発部長でした。妻の晶子さんと子ども2人の4人家族でした。 野口さんの50代は、住宅ローンと子どもの教育費が重くのしかかっていました。毎月50万円の給与があっても、家計は火の車。ボーナスで赤字のぶんをまかない、なんとかしのいでいくことの繰り返しで、とても老後資金を貯める余裕はありませんでした。 59歳のときにやっと子どもたちが大学を卒業し、60歳で退職を迎えました。中途入社だった野口さんの退職金は800万円です。住宅ローンが750万円残っていたため、退職金で全額を返済。定年退職のお祝いにと、残りの退職金を使って温泉旅行に行きました。
会社員の約8割は「再雇用」を選択…まずは70歳まで働いて貯蓄を増やす
貯蓄がゼロの場合、まずは働いてください。生活している限り、必ず支出が発生します。収入がなくては、明日から食べていくのにも困ってしまいます。多額の遺産が降って湧くなんて幸運は、ドラマや漫画の世界だけの話です。 「一発逆転の秘策を期待したのに、働けとは……」などと、ぼやかないこと。定年後も働くという選択肢が、もっとも現実的かつ有効です。 会社員の約8割は再雇用で働いています。2021年4月に高齢者雇用安定法が改正され、70歳まで就業機会を確保することが努力義務化されています。65歳以降も仕事を続けやすい環境になっているかもしれません。 さて、野口さんは、再雇用で65歳まで働くことにしました。野口さんの月収は30万円。晶子さんも仕事を続け、月収は15万円です。 <60歳~65歳までのプランニング> 夫婦の月額支出 約33万円(年400万円) 野口さんの月収 30万円(年360万円) 晶子さんの月収 15万円(年180万円) 夫婦の収入合計 45万円(年540万円) 月に12万円の貯蓄が可能になります。65歳までに、約12万円×12ヵ月×5年=約700万円の貯蓄ができそうです。 加えて、長く働くとメリットがあります。野口さん夫婦は、60歳以降も会社員として厚生年金に加入していました。すると、年金額が増えるのです。5年間でどのくらい増えるのか見てみましょう(簡易計算で参考例です)。 野口さん 30万円×(5.481÷1000)×60ヵ月=9万8658円 晶子さん 15万円×(5.481÷1000)×60ヵ月=4万9329円 65歳での年金額は、野口さんのプラスは約10万円、晶子さんのプラスは約5万円です。 もうひとふんばり、野口さんが70歳まで働き続けたとします。さすがにそれまでと同じではきついので、週に3日の契約社員、月収は20万円です。 <65歳~70歳までのプランニング> 夫婦の月額支出 約33万円 野口さんの月収 20万円(65~70歳) 野口さんの年金 年額210万円(65歳までの年金) なお、野口さんは70歳まで働けば厚生年金はもっと増額されます。70歳の年金受給額は約6万円増えた216万円になります。 長く働くことで月々の収入を得、また65歳から金額がアップした年金を受け取れ、野口さんの家計は少し余裕ができました。旅行にでも行こうかなと浮かれた気分になりがちですが、目先の生活だけにとらわれてはいけません。老後生活は長期的なプランニングが必要です。
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