【F1分析】F1ベルギーGPでラッセルの”二の足”が炸裂! これでは後方のドライバーは届かない……しかし失格はあまりにも残念
F1ベルギーGPは、トップチェッカーを受けたジョージ・ラッセル(メルセデス)が、レース後に最低重量違反によりまさかの失格という結末となった。代わって優勝を手にしたのは、チームメイトのルイス・ハミルトン。初日は苦労し、陣営からも悲観的なコメントが発せられていたメルセデスが、望外の勝利を手にした。 【リザルト】ラッセル失格はあまりにも残念……F1ベルギーGP決勝レース結果 ただ失格になったとはいえ、ラッセルは素晴らしいレースを繰り広げた。トップ4チーム8台のうち7台が2ストップで44周のレースを走り切る中、ラッセルは唯一の1ストップ。レース終盤にはハミルトンとマクラーレンのオスカー・ピアストリに真後ろまで迫られたが、これを凌ぎ切った。 この後続の攻撃を凌いだことも素晴らしかったが、ラッセルの素晴らしさはそのタイヤマネジメントにあった。 ラッセルはミディアムタイヤを履いてスタート。上位チームの中では早めの10周を走り切ったところでピットインした。 その前後には周囲のマシンもピットイン。第2スティントは各車とも1分48秒台のペースで走った。 ただ25周目のシャルル・ルクレール(フェラーリ)を皮切りに、ハミルトン、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ピアストリが続々とピットイン。フェルスタッペン以外は各車ともハードタイヤを履いて、チェッカーを目指した。 タイヤを換えた各車はペースアップ。実質的な首位を走っていると考えられていたハミルトンと、それに次ぐ位置にいるとみられていたルクレールは、1分47秒台前半で走った。追い上げなければならなかったピアストリとフェルスタッペンは、1分46秒台であった。
■ラッセル、タイヤを換えていないのにペースアップ!
そんな中で驚くべきペースだったのがラッセルである。ラッセルはタイヤを換えていないにもかかわらず、1分48秒台から1分47秒台にペースアップしてみせた。タイヤを交換していないのに、タイヤを交換したハミルトンとそれほど変わらないペースで走ったのだ。 上のグラフは、上位5台のレースペース推移を示したものだ。赤丸で示した部分を見ていただくと、ラッセル(緑の点線)がタイヤを換えずにペースアップしたのがよくお分かりいただけるだろう。 タイヤを最後まで持たせながら、二の足も炸裂させた……それで1ストップで走り切られてしまったら、2ストップで追い上げるドライバーたちは届かない。 ラッセルはチームの戦略が素晴らしかったと振り返るが、このペース推移を見ると、ラッセルのドライビングが優れていたと言うべきだろう。しかもこの1ストップ戦略を選んだのはラッセル自身である。 にもかかわらず失格になってしまったのはあまりにも残念。しかしここ数戦のメルセデス勢の充実ぶりは、目を見張るものがある。 最近では、今季はレッドブルvsマクラーレンという構図になってきたという評価が一般的ではある。しかし、やっぱりメルセデスは侮れない……完全復活は近いと言っても良いだろう。 後半戦は、少なくとも三つ巴の激戦が毎レース繰り広げられることになりそうだ。
田中健一