「うつ病に心の弱さは関係ない」丸岡いずみが経験した“心のキャパオーバー”とは? #今つらいあなたへ
厚生労働省の調査によると精神疾患を有する総患者数は、258万人(2002年)から419万人(2017年)と15年間で1.6倍に増加している。また、2020年以降もコロナ禍によるストレスからうつ病になる方が増えたと言われている。日本テレビの報道記者として、「news every.」のキャスターなどで活躍した丸岡いずみさんも、東日本大震災の被災地取材をきっかけにうつ病を発症した一人。当時を振り返り、「うつ病は心の弱い人がなるのではなく、誰でもなることに気づいた」という丸岡さんに、苦しかった日々について聞いた。(取材:たかまつなな/笑下村塾/Yahoo!ニュース Voice)
きっかけは過酷な被災地での経験
――うつ病のきっかけは何だったんですか? 丸岡いずみ: 東日本大震災の取材でした。2011年の3月に地震が起きたとき、ちょうど夕方のニュース番組の準備で、更衣室で着替えている最中にガーって揺れが来たんです。すぐにスタジオに入ってほかのアナウンサーに代わって原稿を読み始めました。しばらく経ったら「東北が津波で大変なことになっている、すぐに東北に入るように」って言われて。これは1カ月ぐらい帰れないと思って、とにかく持っていくものをリュックに詰め込むために、電車が止まっている中、会社の車と徒歩で必死に家まで帰って荷物を用意して、また会社に戻って車で東北に向かいました。 その間に原発が大変なことになっているから太平洋側は危ないという判断で、何時間もかけて日本海側を迂回しました。道路は隆起しちゃって、通れないところがいっぱいありました。コンビニに寄っても食べ物はなく、なんとか東北にたどり着いてからもほとんど食べずにずっと中継をし続けました。 ――厳しい現場で取材をされて、心身ともに疲れてしまったんですね。 丸岡いずみ: そういう状況の中で、見るだけじゃなくて視聴者にどう伝えるのかを頭の中で噛み砕く作業にすごく神経を使っていました。ご遺体の捜索の同行取材にしても、ご家族の感情も考えないといけない。そういう目線であったり、視聴者の目線であったり、いろいろなことを頭の中でフル回転させていました。 あと、東日本大震災のちょっと前に、ニュージーランドでも大きな地震があって、日本人学校の生徒さんたちが何人も亡くなっています。それも海外に飛んで取材をしていました。その後、東日本大震災が起きて、翌月の4月には、今度はロンドンでウィリアム王子の結婚式があって、それも取材に行きました。復興という言葉もまだ言えない状況のボロボロの日本に向けて、どうやってこのハッピーなニュースを伝えるのかっていうところで、とてもモヤモヤしました。それでロンドンから戻ったらまた被災地へ、という生活をしていました。 東日本大震災だけが原因ということではなく、当時、いろいろなことを短期間で体験してしまい、積み重なった結果、たぶん自分の中のキャパシティをどんどん超えていったんだと思います。