【認知症専門医が解説】認知症の人に何度も同じことを聞かれたら、どう答えればいい?
認知症になるとさまざまな症状が見られるようになる。そんな認知症の人の脳の中はどうなっているのだろう? そして、それにどのように対処したらいいのだうか? 認知症専門医、「メモリーケアクリニック湘南」院長の内門大丈さんに聞いた。 (注)以下、特別な注意書きがない場合は認知症=アルツハイマー型認知症とする。
認知症の人は新しいことを記憶するのが苦手
認知症の第一段階に現れる症状が、もの忘れ=「記憶力の低下」だろう。「今日は何曜日?」「月曜日ですよ!」という会話の後、また数分で同じことを聞いてくることがある。 「認知症の患者さんの症状には、よく短期記憶力の低下が見られます。短期記憶を司るのは脳の中の『海馬』という部位です。海馬は側頭葉の奥にある大脳辺縁系にあります。ここの神経細胞に障害が発生すると、最近あったことを記憶できなくなります」(内門先生) 誰でも老化によって、若い頃よりも記憶力が低下する。しかしそのような老化によるものと、認知症によるものでは違いがあるという。 「それは、ほんの数分前のことを忘れたり、体験したこと自体を忘れてしまう点です。よくいわれているのが、今日食べた朝食の内容を忘れるのは老化によるもの忘れ。一方で、食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症…というものです」 ◆記憶には3ステップある 【ステップ1】 新しい情報を記銘(記憶)=脳のタンスの引き出しにしまう ▼ 【ステップ2】 それを保持=引き出しを閉めて保管する ▼ 【ステップ3】 保持されていた記憶を想起(思い出す)=引き出しを開けて取り出す 単なる老化によるもの忘れは【3】の、しまってあるがスムーズに取り出せない(思い出せない)状態だ。この場合、思い出すのに時間がかかるものの、何かのヒントがあったり、ひょんなタイミングで思い出したりする。しかし、認知症の場合は【1】、そもそも記銘(記憶)することができていないのだ。だから、その体験は“なかったこと”になっている。