【認知症専門医が解説】認知症の人に何度も同じことを聞かれたら、どう答えればいい?
「さっきも言ったでしょ!」はNG!
ではそんなとき、まわりの家族はどのように対応したらいいのだろうか? 「何度も同じことを聞かれると、1回2回は同じように答えていても、それが度重なるとつい、『さっきも言ったでしょ!』と声を荒らげてしまいがちです。でも、本人には悪気はなく、そもそもその記憶がないわけなので、家族に強く指摘されたり叱られることで、悲しさやつらい気持ちでいっぱいになってしまいます。 そうすると、怒られるのを避けるために、自分の殻に閉じこもって、会話を控えるなどして孤立していきます。また、家族もどうせ話してもすぐ忘れてしまうのだからと、家族の会話から外してのけ者にしたり、ダメ人間扱いをしてしまうことも。これも孤立につながります」 これが続くと、本人は不安や恐怖、混乱によって、うつ状態になってしまうこともあるという。 「このような状態になると認知機能はもっと低下していきます。つまり、もの忘れを指摘したり、故意に『今日は何曜日?』と試すようなことは、なんの治療効果もないばかりか、むしろ逆効果になるわけです」 特に初期の場合、家族はその変化を受け入れられずに困惑する。そこでつい、それが何かの間違いであってほしい、少しでもしっかりしてほしいと思うがゆえに、試すようなことをしがちだ。しかし、それ以上に本人も困惑していることを知っておくといいかもしれない。 何度同じことを質問されても、何度でもにこやかに答えてあげるのが正解! 「わからなくても大丈夫なんだ。怒られないんだ」と思うことが安心感につながり、症状の悪化を少しでも防ぐことができるかもしれない。症状の悪化が防げなくても、心安らかに楽しく生活できることは間違いない。 「認知機能が低下している方でも、“気になること”は覚えられるようです。特に顔の表情は印象に残りやすいので、にこやかに答えることが重要です。またイヤなことをされた人のことも覚えている傾向があります」 対処方法として、例えば食事をしたことを忘れていたら、代わりに体の負担にならないおやつを出してみる。つまり忘れることを利用する、という方法もある。