若手教師が育つ学校「中堅教員」のふるまいが違う 「誰一人取り残さない」温かい学校をつくるには
キーマンは、ミドルリーダー層の中堅教員
今、学校現場では慢性的に教員が不足していて、若手がチャレンジする機会はもちろん時間をかけて成長することが難しくなっている。若手教員が辞めてしまうことも珍しくない中、学校全体で若手を育てていくにはミドルリーダー層の中堅教員がキーパーソンとなる。ここでは12年間、公立学校の現場で働き、現在は横浜創英中学・高等学校に勤務する前川智美著『救え!!トイレの若手さん ー若手教師を支えるミドルリーダーの接し方ー』から若手育成のポイントについて一部抜粋、再構成してお届けする。 【マンガを読む】大いに張り切るも壁にぶつかる「若手さん」 現在、全国の学校現場では、慢性的に教員が不足しています。「教員を志望する人が減っている」ことと、「休職や退職してしまう教員が増えている」ことのダブルパンチで、とても深刻な状況です。 突然、現場から教員が去ってしまうと、残された教員一人一人の負担はますます大きくなり、子どもたちに悪い影響が及びます。ましてや、若手教員ばかり辞めてしまうのであれば、学校全体の活気も失われていくことでしょう。そうならないよう、学校にはさまざまな対応が求められます。 そこでキーマンとなるのが、「ミドルさん」こと、ミドルリーダー層の中堅教員です。ここでは若手さんの悩みに、ミドルリーダーはどう寄り添えばいいのか漫画とともに紹介します。
1年目の若手さんへの寄り添い方
学校現場に限らないことですが、若手さんが困らないよう「やるべきこと」を明確にするのは大切なことです。しかし、指示さえすればいいというものではありません。 それだけでは、仕事に対する「やらされ感」が強くなってしまい、不必要なストレスを与えてしまいかねません。なぜなら、若手さんはまだ自分で仕事の優先順位を明確にしたり、軽重をつけたりすることができないからです。 若手さんに限らず、教員の多くは「引き算」よりも「足し算」の方が得意です。「ビルド&ビルド」で仕事が増えるばかりの職場になってしまえば、教員は疲弊してしまいます。この悪い慣習をどこかで断ち切るためにも、まずは若手さんに「引き算」の視点をもたせることから始めてみてはいかがでしょうか。 そのために必要となるのが、次の2点です。 ●若手さんに「やるべきこと」を指示する際、ゴールイメージをもたせる(期日とともに、何をどこまで行えばやったことになるのかを伝える)。 ●若手さんが「やるべきこと」だと感じていることを話してもらい、次の4つに振り分けて伝える(もしくは話し合いながら選別する)。 ・期限までに必ずやらなければならないこと。 ・余力があるのであれば、やればよいこと。 ・無理が生じるのであれば、やらなくていいこと。 ・そもそもやらなくていいこと。 こんなふうに仕事を振り分けるだけでも、若手さんは仕事がしやすくなります。 しかも、学校現場には、本来の目的を見失って形骸化してしまっている仕事もあります。そんな仕事ばかりを任された日には、すべてが「雑用」に思えてしまうことでしょう。「やらされ感」が強くなってしまえば、若手さんのモチベーションは下がります。 だからこそ、若手さんに限らず誰かに仕事を任せるときには「何のために」その仕事をするのか、その先にはどんなメリットがあるのか、目的や意図、背景などを説明することを大切にしています。そうすれば当事者意識が芽生え、少なくとも「こんなはずじゃなかった」と思うようなことが減るのではないかと思います。 一方、若手さんが授業に悩んだときは、成長するビッグチャンスです!「授業がうまくいかない」と悩むことができる若手さんは、伸びしろがある人です。向上心の強い若手さんほど、自分の授業について深く悩みます。 ミドルさんとしては、この成長のビッグチャンスを生かさない手はありません。 まずは「今度よかったら私の授業、見に来てみない?」と働きかけをしてみることをおすすめします。 授業改善への近道は、他の教師の授業を見ることです。しかし、それがわかっていても、「先輩の授業を見させてください」と若手さんが自分からお願いするのは相当の覚悟と勇気がいるものです。 また授業を改善する際に大切なのは、ねらいをシンプルにすることです。 例えば、「今日は授業の最初にねらいをはっきりと伝えてみよう」「10分間は必ず子どもの活動時間を確保しよう」といった言葉かけです。目標を一つに絞ってねらいを焦点化することで「授業の中で今何ができていて、何が足りないのか」が明確になります。