山形マット死で遺族が元生徒ら提訴 民事裁判の賠償命令に強制力はないの?
最終的に逃げ得になってしまうの?
もちろん、強制執行をされると被告に不利な面はいろいろあります。例えば、給与が差し押さえられた場合です。給与債権は基本的には給与の4分の1を差し押さえることができます。例えば、給与が20万円だとすると、毎月5万円を損害賠償として支払うことになります。生活が厳しくなる可能性があるのです。さらに、会社側に自分がお金の問題を抱えていることがばれてしまうというリスクもあります。 また、差し押さえから逃れようとすると、勤務先を特定されないように表立った仕事をすることができません。そのうえ、家などの大きな財産を手にいれることも事実上困難となってしまいます。購入した家は当然、強制執行の対象になり得るからです。「普通であればできることも、『強制執行されるかもしれない』というプレッシャーが控えていることで、日の当たる人生を送ることに差し支えがでることはあります」(高橋弁護士)。 民事裁判における損害賠償の判決の効力は、強制執行という形での強制力はある一方、私人間のトラブルという観点から限界があることが分かりました。ただ、不払い続けていれば、「いつか強制執行されるかもしれない」という不安を抱えて生きていかなければなりません。損害賠償の不払いは犯罪ではありませんが、逃げ得とはいえないようです。 (ライター・重野真)