「みんなは歩いているのに私は歩けない」難病で幼い時から車いす生活を送る少女 自身の体を受け入れ立ち向かう原動力とは
さまざまな人との出会いで気づいたこと
今まで佐野さんが苦労したことを聞いてみると、それをあえて言葉にするなら「周りが思う自分と私が思う自分へのギャップ」と話してくれました。 例えば道を歩いているとき、相手に悪気がないのは痛いほどわかるのですが「かわいそうだね」みたいな言葉を投げかけられるなどです。 「車いすや病気=かわいそう」と受け取られたとき、ちょっとショックだったといいます。 佐野さん自身については「日々起こるいろいろなことに対して、大変だなぁとは思うこともあるけど、けっこう毎日ハッピー」と話していました。取材の中で、明るくパワフルな様子が見受けられた佐野さんでしたが、そんな佐野さんの性格について、友達からは豆腐メンタルだと言われるそう。 それは、結構いろいろなことを気にしすぎてしばらく引きずるタイプだからと話します。夜、1人で脳内反省会をしたり、話をするときも語弊がないかなど頭をフル回転したり…。 「ただ、自分の中で考え込むからこそ気づけたり、見えてきたりするものもある、そうやって見えてきたり気づけたりしたものは、これからも大切にしたい」と佐野さんは思っています。 そのような考え方になったのは、いろいろな人との出会いがあったからだといいます。 人と話をしていると「うわあああああ!楽しい!」と自分の視野が大きく開ける瞬間があり、さらに「楽しい!やってみたい!」という気持ちで頭がいっぱいになる。いい意味でそれ以外のことはあんまり考えなくなったと話していました。 「やってみたい!楽しい!」とすぐに行動したくなる佐野さんですが、現在気をつけていることは、どうしても疲れやすい部分があるため、優先順位をつけて取り組むようにしていること。 しかし「結局は全部やりたくなっちゃうんです」と笑っていました。また、睡眠時間もしっかりとるようにしたいといいます。
「車いすスポーツゴミ拾い大会」を企画し実現
佐野さんは「車いすスポーツゴミ拾い大会」を自身で企画し、開催。 ※「車いすスポーツゴミ拾い大会」=「車いすスポGOMI」は、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブの馬見塚健一さんが考案された車いすスポGOMIに、認定NPO法人D-SHiPS32の上原大祐さんが車いす体験をコラボさせて生まれたスポーツです。 以前、佐野さんはこのイベントに参加しました。そのときすごく楽しくて「楽しみながらふとした瞬間に生まれる気づきって、明日からにも根付いていくとても大きなものだな」と感じたといいます。 開催にあたってこんな思いがあったといいます。 「やはり楽しいと人は能動的になれるし、そんな中で生まれる気づきが社会をいい方向に変えていくのかな…と思い、楽しみながら気づきを生み出せる空間をもっと社会につくりたいという考えから、自身が住む掛川市で開催することを決意しました」 最初は構想を練ってはいたものの、イベントを主催した経験がなかった佐野さんは不安になります。しかし、だんだん構想を練る中で、実現したい気持ちが大きくなり、もう一度詳細に構想を練り直すことに…。 そこからいろいろな場所に出向き、車いすスポGOMIの意義や思いをプレゼンしました。 「今思うと、とても無謀な挑戦だったなと思う」と笑う佐野さん。 そこで佐野さんの熱意が伝わり、石川副市長をはじめ、掛川市役所や掛川市社会福祉協議会の行政のみなさん、地元企業などとても多くの方の力が集まり「車いすスポーツゴミ拾い大会」実現へと繋がったのです。 また、令和5年度掛川市高校生チャレンジ公募事業にも採択され、当日は参加者、ボランティア含め約100人規模に。当初は予想だにしなかったとても大きなイベントになったといいます。 「イベントの開催経験もなく本当に0からのスタートだったため、まずは開催までもっていくのが非常に大変でした」と語る佐野さんですが、無事に実現。 大会を行うにあたって、佐野さんにはこだわりや思いがありました。 「『気づきを限定しない』という点には、イベントの準備をする中でもすごくこだわって進めました。車いすに乗ったときの気づきだけでなく、街に対しての新しい発見、街の人の優しさなど人によっていろいろな気づきが生み出されるイベントにしたかったからです。そのため、気づきを限定しないために、いろいろなしかけをイベント内に散りばめました」