元お笑い芸人・著名個人投資家の井村俊哉氏らが新投信「fundnote日本株Kaihouファンド」立ち上げ
4つのプロセスで銘柄選定
助言に関わる新しい投信のコンセプトや目指す方向性について教えてください。 井村氏:そうですね。割と「井村ファンド」みたいに言う方も多いのですが、これは竹入敬蔵ありきのものであるということは、かなり強調したいですね。自分一人では到底実現できなかったでしょう。Kaihouという会社の名前にもその思いは込められています。Kaihou には、株式市場の開放、ニッポンの解放など、様々な意味があるのですが、私は「竹入さんの運用能力を世に開放する」ことも含めたネーミングだと捉えています。 助言するファンドは、特徴を一言で表すならば「アルファの追求」です。アルファとは、企業本来の価値と株価の差。この差が大きければ大きいほど、高いリターンが狙えます。こうした銘柄を20程度選んで集中投資するのが基本的なコンセプトですね。 竹入氏:平たく言えばバリュー投資なのですが、私と井村さんの、バリューに対するアプローチは少し違っています。私はどちらかというと「負けない」バリュー投資を目指しています。「もうこれ以上、下がることはないだろう」という視点で銘柄を見ています。 井村氏:対する私は、上を見ていますね。株価がいくら下がらなくても、上がらなくては意味がないと思っているので、上昇余地を強く意識します。でも結局、安くないと上昇幅は狙えません。だから結局、負けないバリュー投資も、攻めのバリュー投資も、表裏一体なのですよ。 こんな感じでポリシーは若干違いますが、様々な要因で極めて割安に放置されている銘柄に目を付けて、超過収益を最大化させたいというのは2人の変わらない思いです。アルファへの執念、執着心こそが、運用助言の成否にかかっていると言っても過言ではない。 アルファが見込める銘柄を、どのようなプロセスで発掘していくのでしょうか。 井村氏:「発掘」「分析」「投資」「創出」という4つのプロセスに沿って銘柄を選定していきます。竹入さんは本当にすごくて、上場銘柄全件の適時開示情報をチェックしています。まあ、今も私が一生懸命しゃべっている横で適時開示を見ていますが……。こんな感じで竹入さんは、会話をしながらも適時開示を読むことができる人です。 竹入さんが一度3900銘柄全部に網をかけて、その中からアルファが見込めそうなものをピックアップするのですが、これが「発掘」です。その後、「分析」が始まるのですが、拾った銘柄すべてに点数(スコア)を付けていきます。株価を押し上げる材料(アップサイド)、押し下げる材料(ダウンサイド)、それぞれを1つ1つ点検し、点数化していきます。例えば1株当たり利益(EPS)の成長率、価値が顕在するカタリスト(きっかけ)はあるかどうかが、アップサイドの材料として挙げられます。逆にダウンサイド面は、独自のネットキャッシュ算出モデルを使って財務の健全性を評価したり、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)などから、下値が限られるかどうかを判断したりします。 竹入:どんな項目を加点対象にするか、減点対象にするか、すべてをさらすことはできませんが、バランスが取れていてしっかり機能するモデルであるとは思っています。 井村氏:スコアリングの結果、上位に上がった 20銘柄程度が投資対象となるわけですが、投資後もより大きなアルファが狙えるよう、投資先に働きかけるエンゲージメント(対話)を行います。これが「創出」です。例えば100の価値を持つ銘柄を70で買って100を狙うだけではなく、投資先の経営陣との対話を通じて、もともとの価値から110、120に引き上げていくという。これは、私がずっと前からやりたかったことでもあります。銘柄選定にかける手間を、ある程度竹入さんと分担することができるようになりましたので、私は自分のリソースをエンゲージメントに費やそうと考えています。 竹入氏:井村さんがすごいのは、「本当にそうなっているのか」確認しようとする執着心。もう一段階潜りに行って、真実をつかみ取ろうとする。私も気になることがあったら、書籍を読んだり、過去の数字を調べたりするようなことは割とよくやります。でも実際そうなの?となった時、その裏取りがちょっと甘い。 でも井村さんは、あらゆる手段を尽くして本当のことを探しに行く。いろんな人に質問し、「教えてください」と頭を下げる。このドアノック力、やばいですよ。 互いの力をリスペクトし合う姿勢があるからこそ、素晴らしいチームプレーが発揮されるのではないでしょうか。今日はありがとうございました。
武田 安恵