「少年刑務所」受刑者の書いた詩…罪をつぐなって社会に戻る日のために
奈良少年刑務所から、「社会復帰のために、受刑者向けに詩の教室を開いてほしい」と依頼された詩人・寮美千子さんは、「本当に詩が役に立つのか?」と疑問を感じたという。ところが、重罪を犯した少年たちが紡ぎ出した詩は、想像を超えるものだった。12月10日、RKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』に出演した神戸金史・RKB解説委員長が、寮さんの体験を報告した。 【写真で見る】少年が書いた刑務所の絵 ■少年刑務所とは 12月7日、8日に福岡刑務所で、受刑者が作った製品を安価で販売する「矯正展」が5年ぶりに開かれました。きれいな革靴やバッグなど、いろいろなものがありました。その中には、佐賀少年刑務所からの出品もありました。 少年刑務所は、犯罪傾向の進んでいない17~25歳の男性受刑者を収容します。函館、盛岡、川越、松本、姫路、佐賀の全国6か所に設置されています。もう1か所、奈良にもあったのですが、奈良少年刑務所は2017年3月で廃止になっています。 この奈良少年刑務所で、受刑者に「コミュニケーションをもっと学ばせてあげてほしい」と頼まれたのが、作家で詩人の寮(りょう)美千子さんです。 【寮 美千子】 作家・詩人。1955年東京生まれ。千葉県立千葉高校を卒業後、外務省、広告制作会社勤務、フリーランスのコピーライターを経て、1986年に毎日童話新人賞を受賞し作家デビュー。2005年、泉鏡花文学賞受賞。絵本・童話・詩・小説・ノンフィクションと幅広く執筆。2006年に奈良へ移住。2007~16年、奈良少年刑務所の外部講師を務めた。 ■「助けて」と言えない少年たち 寮さんが奈良に移り住んだ時に、少年刑務所との付き合いができて、ある日唐突に依頼されたんだそうです。 寮:社会に戻ってきた時に、困らないような人になってもらおう、教育に重きを置くっていうことになって、情緒面のことも「ちゃんとみんなとコミュニケーションできる人になってもらいましょう」というようなこともあって、社会性を涵養するプログラム、じわじわと水が染み込むように育てていくという形で「その講師をやってくれ」って言われたんです。「え?それは私が直接受刑者とお話しするってことなんですか?」って聞いたら「そうです」「どんな罪の人が来てるんですか?」「そうですね、強盗、殺人、レイプ、放火、覚醒剤などです」と言われて。「えー、ちょっとそれは…」。「そうおっしゃらずに」と電話の向こうで懇願するの。 寮:「この子たちは困った時に、『助けて』も言えない」コミュニケーション不全で。「嫌なことを頼まれた時に『嫌です』も言えない。一番愛してくれるはずの親から殴られたり『お前なんか産まなきゃよかった』って言われたり、あるいは教育熱心すぎる親に『こんな点じゃ、うちの子じゃありません』とか言われたり、いろいろあってここに来てるんだ」と。「つらいから、心を閉ざしている。閉ざしていると『悲しい』という気持ちも入ってこないけど、『うれしい』『楽しい』も入ってこなくなる。そうすると、自分が何を感じているのかわからなくなる状態になっちゃうんです」って言われた。「生きている実感がない。だから、荒野にポツンと独りで立っているのが、彼らの心の景色です。そこに童話や絵本や詩を使って、彼らの心の芽を生やしてあげて、情緒を育ててやってほしいんです」と言われたんです。言葉を使って。 寮:「何言ってんだ、この人?」って思いました。だって、人を殺すところまでこじらせまくって、実行しちゃっている子たちですからね。そんな子に、絵本とか詩本とか何?役に立つの?自分が作家をしながら、全然なんかそこまで信じられない。「無理です」って言ったんだけど、懇願されちゃって。「この子たち、このまま返したら『助けて』も言えないから、絶対刑務所に逆戻りです。それだけは避けたい。何とかしてください」ってほだされちゃって、やることになっちゃったの。 こんなことを頼まれたら大変ですよね。作家である寮さんでさえ、そういう気持ちになったと。ただ、罪は罪として刑務所で受刑者として過ごさなければいけないんですけど、まだ若いですし、必ずいつか社会に戻るわけですから、「その時のためにも」と少年刑務所から頼まれたのが、独自の教育「社会性涵養プログラム」でした。