「少年刑務所」受刑者の書いた詩…罪をつぐなって社会に戻る日のために
■「こんなんで授業できるんですか?」 寮さんは2007年~16年、「物語の教室」を担当したそうです。月に一度、90分の授業です。受講者は10名ほどで、最初はこんな感じだったそうです。 寮:刑務所の中でも一番「困ったちゃん」「困ってるちゃん」ですね。みんなと対話もできない。間違えて注意されても返事もできない。そういうような子ばっかり10人呼ぶんです。もう教室入った時に「こんなんで授業できるんですか?」って思いました。ブルブル震えているような子がいると思えば、「オレ様オーラ」全開で人をにらみつけている子もいるし、真っ暗な顔をして下を向いたきり何も言わない子とか、目が宙を泳いで人というよりは土の塊、目玉はビー玉みたいな。ニヤニヤ四六時中笑っている子とか。怖いですよ。「こんなんで授業できるんですか?」って思いましたよ。 このお話を聞いたのは、11月30日にブックスキューブリック箱崎店(福岡市東区)で開かれた寮さんのお話を聞く会でのことでした。聞き手は店長の大井実さんです。 ■最初の授業でいきなり変化が 引き受けた寮さんはとにかく「最初は絵本をみんなで読もう」と。登場人物の役柄ごとに、線を引いて「ここだけ読めばいいから」と言って、みんなで読んでもらう。ガタガタでうまくいかず大変だったそうです。ところが突然、みんなで合わせてしゃべろうという動きが始まりました。最初の授業で、寮さんは本当に驚いたそうです。 寮:全部ひらがなで書いてあって、2~3行とか4行とか大した行数はないんです。前に2人立ってもらって、みんなも床の上に座ってこっちを見ているんですけど、「大丈夫かな、読めるかな、読めるかな……」、最後のページまで行くとみんなホッとして「よかったねー!」って盛大な拍手が湧くんですよ。初めて行った授業の最初の1時間目の、その瞬間でした。いきなり変化が、始まった。いきなりですよ。 寮:「緊張したけど、読めてよかったです」とか、「拍手もらって、うれしかったです」と。最初はみんなちょっと下向いて「やりたくない」って言っていた子がだんだんやりたくなってきて、最後の方になると「次、誰やりますか?」って言うと「はい!」って自分から手を挙げるわけですよ。最初のアウェー感と全然違う空気感になっているんですよ。たった1時間半、初対面の授業で。「すごいな」と思って。 これは、寮さんの実体験です。刑務所の職員も「一体何をしたんですか?どうしてこんなことが」と言ったそうです。寮さんが何かしたというより、彼らの中にもあるものが引き出されてきたという感じだったんだろうと思います。