フジッコの「塩こんぶ」はなぜロングセラー商品になれたのか? 商品がたどってきた「変遷の歴史」
あのロングセラー商品はどのようにして生まれ、どのようにヒットをつづけてきたのか。その道のりをたどる「ロングセラー物語」。今回は、発売から59年となる、フジッコの「ふじっ子(塩こんぶ)」にスポットを当てる。現在のブランド担当者が商品の歴史と今を語る。 【写真】「日本のどこがダメなのか?」に対する中国ネット民の驚きの回答 〔撮影:西崎進也〕 ---------- 名倉留美さん なぐら・るみ/大阪府生まれ。大学卒業後、'09年にフジッコ入社。営業部、新規事業開発、産休・育休を経て、'23年より塩こんぶなどの商品企画・マーケティングを担当。管理栄養士。 ----------
選りすぐりの昆布を使用
もともと、とろろ昆布から始まった会社でした。自社ブランドの商品を多く出していかないと、という思いから同じ昆布の製品として手掛けたのが、「ふじっ子(塩こんぶ)」でした。 とても思い入れがあったのだと思います。現在の企業名である「ふじっ子」の名前がついた最初の商品なんです。 一度にたくさん作れるよう、大きな箱のような釜に電極をつけて煮炊きをする「煮熟(しゃじゅく)釜」と呼ばれる装置を手作りしていました。こうして大量生産できるような仕組みを構築し、全国に展開していきました。 大きなこだわりは、品質です。いいものを使わないとお客さまに申し訳ない、と創業者は原料からとことんこだわったそうです。 今も、北海道の豊かな海でとれた、肉厚でミネラルたっぷりの選りすぐりの昆布を使用しています。 また、着色料や保存料、甘味料などを使っていないのは、発売当初からです。今でこそ当たり前になっていますが、当時はなかなかないことでした。 しかし、安心・安全は私たちの会社の大事なモットー。難しい技術だったようですが、開発を実現させました。 なぜ昆布が北海道なのかというと、海水温が低いところでしか育たないからです。また、北海道は川も多く、この川から海に山の栄養分が流れ出てくる。太陽の光もたっぷり浴び、昆布としては最高の場所なんです。 難しいのは、北海道の昆布漁は、基本的に7月~9月の3カ月しかできないことです。しかも、この間も、雨が降ったら漁はできないし、波が高くなって海がシケたら、やっぱりできない。原料の確保も、なかなかにヒヤヒヤです。 30年ほど前までは、昆布は年間3万トン水揚げされていたそうです。ところが、今や1万2000トンほどになってしまっています。地球温暖化の影響で海水温が上がってきてしまっていて、とれなくなってきているんです。