なぜ浦和レッズの新星GK鈴木彩艶はイニエスタを止めることができたのか…デビュー以来3戦連続無失点は26年ぶり快挙
今回が最終選考となる土壇場で、彩艶はJ1で実績を残す大迫敬介(広島)、沖悠哉(鹿島アントラーズ)、谷晃生(湘南ベルマーレ)への挑戦権を手にした。森保一監督を振り向かせるだけの強烈なインパクトを、今シーズンの浦和で残してきた証となる。 ユースから昇格して1年目の彩艶は、3月のYBCルヴァンカップで公式戦デビュー。浦和のリカルド・ロドリゲス監督を「簡単な判断ではなかったが、いいパフォーマンスを見せていたので」と言わしめ、リーグ戦でも西川に代わってチャンスを手にした。 「最初の試合よりも自分自身が主体となって、プレーできているんじゃないかと感じています。ただ、今日もそうでしたけど、攻撃やビルドアップの部分で自分のキックミスからボールを失う場面が多かった。自分としては課題が多く残った試合でした」 神戸戦を含めた今シーズンの軌跡をこう振り返った彩艶は、イニエスタのシュートを止めた場面の「その後」にも課題を求める。左手で弾いたボールがペナルティーエリア内に転がり、詰めてきたドウグラスが至近距離から放たれた強烈なシュートを、ゲームキャプテンのDF槙野智章が身体を張ったブロックで阻止していたからだ。 「混戦のなかであそこに弾くと、やはり詰められてしまう。距離感的にキャッチしにいくのか、もっと外へ大きく弾くのかというのは、これからの反省点だと思ってます」 どれだけビッグセーブを連発しても、自軍のゴール前でリスクを残しては意味をなさない。無失点を導いてくれた、槙野をはじめとする先輩選手たちとの共同作業に感謝しながら、彩艶は個人としてより高いレベルを貪欲に追い求めていく。 川口はアトランタ五輪を経てフル代表の守護神を担い、ワールドカップ代表に4度選出された。ロドリゲス監督も「将来的にはフル代表に定着する選手だと思う」と、豪快かつ俊敏なシュートストップや敵陣の奥深くまで届くキック、そしてハーフウェイラインを越すロングスローと、まだまだポテンシャルを秘める彩艶の未来へ太鼓判を押す。 大会閉幕後に19歳になる彩艶が大逆転で東京五輪代表入りを果たせば、19歳67日で2004年アテネ五輪代表に選出された、FW平山相太(当時筑波大)を抜いて史上最年少となる。もっとも、彩艶自身はしっかりと自分の足元を見つめていた。 「自分としては(U-24代表に)選ばれたことは頭になく、いつも通りにチームの勝利のためにプレーしたい、という気持ちでいました」 今後は26日に広島、30日には名古屋グランパスとのリーグ戦が待つ。浦和のゴールマウスを守り、連勝を継続させた先に31日から活動を開始する、川口氏がGKコーチを務めるU-24代表へモードを切り替える。そのときにデビューからの連続無失点試合記録を更新していれば、胸を張って先輩たちとの競争へ挑む上での最高の自信になる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)