「相談しにくかったこと話しやすく」疎外感を抱く当事者らメタバース空間で交流 希少がんの患者やLGBTQの若者に「居場所」、岡山大がプロジェクト
長谷井准教授は、通常の環境だと出会えない患者同士がメタバースで出会い、心を通わせることができれば、治療が終わった後も「生涯の友達になり得る」と期待する。メタバースで知り合った人に「(実際に)会うことを目標に頑張る」と話した患者もいたという。 各地の病院と連携した「居場所」は月数回開催しており、小学生~20代の入院中や通院中の患者のほか、医療従事者も参加している。 ▽LGBTQの若者の孤立防止にも 2023年秋には、メタバースを使った新たな交流プロジェクトも始まった。長谷井准教授は、LGBTQ(性的少数者)の若者たちの孤立防止にも役立ててほしいと願い、当事者や、そうかもしれないと感じている子ども・若者のための居場所づくりを全国各地で行っている一般社団法人「にじーず」に活用を提案。にじーずのメタバースづくりに協力した。 LGBTQユースの抱える孤独や不安は深刻だ。認定NPO法人ReBitがインターネットで行った「LGBTQ子ども・若者調査2022」によると、10代のLGBTQの29・4%は「しばしば・常に」孤独感があると回答。過去1年に自殺を考えたと答えたのは48・1%に上っていた。
にじーず代表の遠藤まめたさんは「当事者、そうかもしれないと悩んでいる子たちが、自分のことを安心して話せる場は多くはない」と話す。 ▽「人と会っているような温かみがあった」 にじーずは全国9都府県(宮城、埼玉、新潟、東京、長野、京都、大阪、兵庫、岡山)で居場所事業を進めている。居場所にリアル参加できた子どもたちからは「自分だけではないと感じた」などの声が寄せられていたが、来られない子もいることが課題だった。 2024年1月、メタバースを利用し、13~23歳を対象とした匿名交流会「バーチャルにじーず」を開始。第1回には5人ほどが「アバター」として参加。ソファのほか、ダーツなどゲームも用意された「部屋」で、約1時間半を過ごしたという。 本格始動前の試験運用の際には、参加者から「人と会っているような温かみがあって、楽しかった」という声のほか、トランスジェンダーの当事者から「ここなら女性の格好ができる」との感想が寄せられたという。
▽疎外感を抱いていた当事者が「地域を越えてつながれる」 バーチャルにじーずは、月1回開催。遠藤さんは「スマホやパソコンを使って全国どこからでも参加でき、好きな格好で、自由に過ごせる」と話す。初参加の人にはスタッフが事前に年齢確認などを行う。にじーずホームページから申し込める。次回は6月19日午後8時から開催予定だ。 長谷井准教授は今後も、メタバースを使った患者同士の交流プロジェクトを続け、各地の医療機関に広げていきたいという。「疎外感を抱き、思いを共有できる人がいないと悩んでいた当事者が、地域を超えてつながれる」としている。