佐々木朗希、空前の“逆指名ドラフト”…メジャー側はどれだけ「お買い得」か、佐々木が重視するカネ以外の条件とは
■ 佐々木投手の条件は? 地理的条件だけではなく、例えば、他の日本選手が在籍していることはやりやすさという点でメリットにもなり得る。その半面、日本選手が誰もいないチームでプレーすることを望む場合には候補から外れることにもなりうる。 チームの戦力状況についてはどうだろう。大谷選手は昨季、メジャー屈指のプレーヤーとしてワールドシリーズ制覇の可能性が高いドジャースを移籍先に選んだ。佐々木投手の場合は、自らがメジャーでさらに成長していく段階にあるため、必ずしも現状の戦力が充実していて先発枠の争いが激しいチームではなく、よりチャンスを与えてくれる機会が多いチームが選択肢に入ってもおかしくはない。 また、若い投手の育成方針やプランなどに定評がある球団や、有能な投手コーチや充実したトレーニング施設を抱える球団も、プレゼン次第では佐々木投手の心をつかむ可能性があるだろう。 サンケイスポーツによると、本命視されるドジャースのアンドルー・フリードマン編成本部長は地元メディアのインタビューで、来季の先発ローテーションを6人で回す構想を明かしたことを紹介した。先発枠に余裕を持たせたローテーションは、佐々木投手の獲得アピールの材料になりそうだと指摘する。 マリナーズでは、地元メディアが、佐々木投手の獲得にイチロー氏(会長付特別補佐兼インストラクター)が面談の場に同席する可能性を報じている。 同じく「25歳ルール」でメジャーへ移籍した大谷選手は、投打の二刀流をサポートしたエンゼルスで才能をさらに開花させ、FAになった昨季オフに10年総額7億ドル(当時のレートで約1078億円)という超大型契約につなげた。 佐々木投手の場合も、金銭的な条件だけを望むのであれば、そもそも「25歳ルール」の対象から外れる年齢まで待ってから移籍する選択肢もあったはずだ。それよりも、自らのキャリアをメジャーで早くスタートさせ、より大きな成功を手にするために今オフの移籍をロッテにも容認してもらった。そんな佐々木投手を口説き落とす球団の決め手になるのは、はたして――。 田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授 1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。
田中 充