「なんで予約せずに指定席に座ってるの?」 度々発生する新幹線での訪日客トラブル、原因はルールの違いにあり?
車掌ストで指定席無効→返金なし
はたまた、「今日は無事に指定席に座れた」と安堵しながら旅していると、いきなり車内アナウンスが入り、「この列車は不具合が発生したため、ここで臨時停車します。後続の列車が拾ってくれることになりましたが、現在の列車の座席指定は後続列車では無効です」と言われ、駅でもなんでもない線路脇に降ろされたこともありました。 もちろん、後続の列車では席がもらえず。そのうえ後続列車の乗客から「お前たちの列車の故障のせいで、こっちの列車も遅延だよ」と言わんばかりの冷たい視線を浴びせられながら、その先の旅は立たされたまま数時間の耐久レースに……。 英国では、車内で検札をする車掌がストライキで休んだため、列車自体は走るものの、指定席券はおろか、一等、二等などの区分も一切が撤廃という事例が頻発します。こういう場合は大抵、運転士がストライキで休んで間引き運転にもなっているため、超満員のうえ、日頃は乗らない一等車に勝手に乗って酒盛りをする人など、車内は無法地帯と化していることも。指定券が無効になる例を挙げればきりがありません。 そしていずれの場合も、指定席券の料金は返金されません。 このような指定席の概念が一般的な欧州の旅行客にとって、乗り込む時点で指定席券の有無を確認されない日本の新幹線が、全車両が「任意予約の自由席」だと映っても不思議はありません。ましてや、車内での検札が廃止された新幹線の指定席車は、ストライキ時に検札が取りやめになり、「無法地帯化」した英国の列車と似た状況になっていると言えます。 もちろん「郷に入っては郷に従え」で、旅行者は現地のルールに従うべきなのは当たり前なのですが、外国人が「指定席車は、ガラガラであっても座ったらダメ」という発想にならないのは、仕方がないことかもしれません。 過密な運行スケジュールを厳守している日本の新幹線では、欧州の鉄道のように列車の乗降口で検札するのは無理な話ですが、「指定席車と自由席車が1編成の中で混在している」というルールを訪日客に理解して尊重してもらうために、駅のホームで「ここに到着する車両は、指定席券がなければ乗れません」と、もっと明確に表示をすることは、ある程度有効なのではないでしょうか。
赤川薫(アーティスト・鉄道ジャーナリスト)