アルバイトが商談まで…ドンキの躍進を支える“権限委譲”の文化とは
アルバイトが商談まで~常識破りの「権限委譲」
成増店の菓子売り場を担当するのは入社2年目の安田将宇。独自の判断で大量に仕入れたクランキーチョコの品出しをしていた。 「いつもより安く仕入れられたので、量を多めにとって安く売ろうかな、と」(安田) 品出しを終えた安田は値段を355円から301円に値下げ。上司に相談は一切なし。売り場担当者の判断が全てなのだ。 「これだけ好き勝手にやることが許される会社はないと思うので、とても楽しくやっています」(安田) 一人の商売人として勝負できる。だから高いモチベーションが生まれるのだ。 権限を委譲されるのは社員だけではない。東京・北区のドン・キホーテ赤羽東口店で14年アルバイトをしている佐藤春香は衣料品売り場を担当。この日の仕事は「発注をしています。在庫が減ってきたものやサイズが偏ってしまったものなどを」と言う。 アルバイトでも社員と同じように仕入れの権限を持っていて、自分の裁量で発注もできるのだ。売れ残った商品をセール品にするのも佐藤の判断だ。 独自に仕入れ、ヒットを生んだ商品が「赤羽Tシャツ」(1428円)。周辺に飲み屋が多く、店員が買ってくれるかもしれないと仕入れてみたら大ヒットした。 佐藤をこの日、訪ねてきたのは「赤羽Tシャツ」を作ったメーカー「バディクリエート」の近藤健太さん。秋冬物の提案にやってきた。こうした商談もアルバイトが一人で行う。ドン・キホーテの権限委譲はここまで徹底しているのだ。 「アルバイトに任せてもらえて、自分が仕入れたものが売れていくのは楽しいです」(佐藤) 全国に634店舗を展開するドン・キホーテ。そのトップに立つPPIH社長CEO・吉田直樹(59)は「商品の構成は店によって全然違います。本部が指示することはない」と言う。
ドン・キホーテは同じように見えて一店一店が全く違う。例えば東京・渋谷のMEGAドン・キホーテ渋谷本店は、客の7割を海外からの観光客が占めている。だから他のドン・キホーテではあまり見かけない英語、中国語、韓国語で書かれたポップが。 人気があるのが日本の菓子。手軽なお土産と、大量に買っていく人が多い。外国人に人気がある商品を中心に仕入れ、1カ月で約20億円を売り上げている。 インバウンド客狙いの店作りを推し進める店長の西川智尋が特に強化したのがキャリーケース売り場だ。 「訪日のお客様が増えて需要が高まっていたので増やしていった形です」(西川)