日本企業の「台湾」進出は2988社、2年前から4.4%減
「台北都市圏」が最多、約1400社が進出 桃園・台中・高雄など広範囲に広がる
台湾における具体的な進出地をみると、最も多いのは台北市(Taipei)・新北市(New Taipei)・基隆市(Keelung)の3直轄市で構成される「台北都市圏」で、1397社が判明した。台北市を中心に、製造業や商社など卸売業の現地法人、駐在所などのオフィス展開が目立ち、製造拠点としての進出は多くみられなかった。 次いで多い「桃園市(Taoyuan)」(143社)は、製造業の進出が約7割を占め、自動車産業のほか半導体、エレクトロニクス部品などの企業で多く進出が見られた。「台中市(Taichung)」(132社)、「高雄市(Kaohsiung)」(131社)なども、製造業の占める割合が5割を超えた。日本企業の台湾進出は、総じて台北市を中心に台湾海峡に面した都市部に集中し、中央山脈を越えた東シナ海側の地域では、「宜蘭県(Yilan)」や「屏東県(Pingtung)」など一部のエリアにとどまった。 2022年と比較すると、減少した都市圏・直轄市・県は8となり、増加(3)を大きく上回った。このうち、社数ベースでは「台北都市圏」の減少幅が最も大きく、2022年の1420社から1397社と2年で23社・1.6%減少した。台北都市圏に次いで減少幅が大きかったのは「高雄市」で同10社・7.1%減少した。いずれの都市も、台湾への進出企業全体が減少した影響を受けた。 一方、増加した県で特に目立つのは「嘉義県/嘉義市(Chiayi)」で、2022年の6社から倍増の13社が判明した。同地域では、主産業となる農業に加え、ドローンセンターの開業、世界最大手の半導体ファウンドリ・TSMC(台湾積体電路製造)が新たな工場を建設するなど半導体産業の集積も進んでおり、食品産業や半導体部材関連の企業などで進出がみられる。
台湾進出企業の想定リスク「戦争・テロ」は2割未満 台湾有事の備えが課題に
近時の台湾情勢をめぐっては、ロシアによるウクライナ侵攻以降、グローバルに拡大したサプライチェーン(供給網)の寸断というリスクが顕在化し、経済面で大きな脅威となっている。加えて、足元では中国・台湾間の緊張が高まっており、日本企業でも対応が急がれている。 他方で、こうした台湾情勢や中国情勢の悪化に対する日本企業の備えは、十分とは言い難い状況が続いている。2022年と24年の調査データを基に、台湾・中国それぞれに進出している企業のBCP(事業継続計画)の策定動向について分析した。その結果、事業が中断する想定リスクのうち国家間の武力衝突や紛争など「戦争・テロ」をあげた企業の割合は、2024年調査で台湾進出企業のうち18.1%、中国進出企業で15.1%だった。全国平均(調査全体)の16.0%に比べると、台湾進出企業の同割合は高い水準となっているものの、22年に比べると僅かに低下するなど、有事を含めた危機対応に課題を抱える企業は少なくないとみられる。 足元では、既に2年前から「もしもの事態が発生した場合の対応策を考えなければならない」といった声が台湾・中国に進出する企業から聞かれるなど、台湾有事への危機感を強める企業は多い。台湾在住の駐在員やスタッフの退避計画や、特に半導体関連で強まるサプライチェーンの管理など、万一の事態に備えた退避計画や代替調達・生産案の確保が必要になる。