『虎に翼』脚本・吉田恵里香に聞く。あらゆる立場の女性を描くこと、憲法第14条への思い 「寅子だけが正しいわけではない」
「はて?」という口癖に込めたもの
―寅子の「はて?」という口癖も印象的です。「はて?」という口癖について、生まれた経緯や思いも聞かせてください。 吉田:第1回から登場するので、初期から決まっていたことでしたが、寅子がなにか疑問を口に出すときの決まりというか、寅子がなにか疑問に思ったんだな、おかしいと思ったんだな、ということをわかりやすく提示できる言葉がほしいなと思って考えたのが「はて?」でした。 誰かを否定したり攻撃したくて使っている言葉ではないんです。「それどういう意味ですか?」とか「違うんじゃないんですか?」という強い口調の言葉だと会話が終わってしまう可能性もあると思うんですが、この作品は「声を出していく、思ったことを口に出していく」ということもテーマなので、それができる導入になればいいなと思っていました。 吉田:世の中の人も、ちょっと冗談交じりでもいいので、なにか思ったことがあったときに「はて?」と言って、この人何か思っているんだな、と気づいてもらえるワードになれたら素敵だなと思ったのが、「はて?」が生まれた理由です。
夫婦別姓、LGBTQの権利の問題は「もっと昔からある」
―終盤では夫婦別姓や、LGBTQの権利の問題も描かれました。昭和30年代を舞台にこのテーマを盛り込んだのはなぜでしょうか。 吉田:昔から比べたら良くなっていることはいっぱいあると思いますが、憲法14条でみんなが平等であると書かれている国にもかかわらず、なかなか周知されていないことによって、平等ではない扱いをされている人がいるということが事実だと思います。 それがこの令和の時代に始まったのかというとそうではなくて、調べれば調べるほどもっともっと昔からある。寅子が生きている時代からあったし、寅子が生まれる前からも存在していたことが大半でした。 大半の方々が当時見ないように、意図的か無意識かは置いておいて、ちゃんと見せることに意味があると思いました。「盛り込む」というより、当時からいた人たちをきちんと描きたいという気持ちが大きかったです。法律もののドラマですし、寅子が扱っているもの、出会っている人を考えれば通る道かとも思っていました。 ―視聴者にはどのように受け取ってほしいと思いますか? 吉田:朝ドラにセクシュアルマイノリティの方や外国の方が出たことで、何か思われる方もいるかもしれないと思うんですが、歴史や当時の状況を調べるとたくさん情報が出てきます。 見た方にどう受け取ってほしいかというとすごく難しいんですが、マイノリティの方々は当時から当たり前にいて、それは現代も変わりません。この問題がいま70年以上経ってもそのまま変わっていないということに、どうしてなのか、思いを馳せていただけたら嬉しいなと思います。