はやぶさ2から分離成功 探査ロボ「マスコット」リュウグウを本格観測へ
独仏協力のマスコット、4つの観測機器を搭載
それでは、10月3日に投下されたマスコットに話を移しましょう。マスコットはドイツ航空宇宙センター(DLR)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が共同製作したもので、幅約30センチ、奥行き約30センチ、高さ約20センチ、重さ約10キロの直方体の機体で、広角カメラ、分光顕微鏡、熱放射計、磁力計の4つの観測機器を搭載しています。 広角カメラは複数の波長でリュウグウ表面の画像を撮影します。分光顕微鏡はリュウグウを覆う岩石や砂などを詳しく観察することで、岩石を構成する鉱物を特定したり、特性を調査したりしていきます。さらに、熱放射計ではリュウグウの表面温度を、磁力計で磁場を測定し、リュウグウの科学的な特徴をより細かく調べます。 ミネルバ2-1がリュウグウでの移動を重視しているのに対し、マスコットは科学観測を重視した構成と言えるでしょう。太陽系の小天体に着陸し、科学観測した例はこれまでほとんどありません。2014年11月にヨーロッパ宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」からチュチュモフ・ゲラシメンコ彗星に投下された着陸機「フィラエ」が初めてです。マスコットは、フィラエに次いで太陽系小天体での科学観測にチャレンジします。小惑星では初の試みで、観測が実施された事実だけでもすごいことです。データが無事に取得できれば、リュウグウについてさらに詳しい情報が得られ、今後のはやぶさ2の探査に役立てるのはもちろん、リュウグウがどのようにできたのか、さらには地球のような岩石惑星の形成などについての大きなヒントを与えてくれるかもしれません。 マスコットの直方体の箱のような見た目のために、はやぶさ2から投下された後はまったく動くことができないのではと思う方もいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。マスコットの機体には、モビリティ・ユニットという機構が搭載されています。モビリティ・ユニットとは、先端におもりのついた長い棒のような構造物があり、モーターの回転によっておもりを振ることで、機体の姿勢を変えたり、ホッピングしたりすることができます。 観測機器を正常に作動させるために、マスコットには上面が決まっています。リュウグウに投下された際、バウンドして上下逆さまや横向きの状態で静止しても、センサーによって姿勢を検知して、モビリティ・ユニットを作動させることで、正しい姿勢に修正することができます。また、このシステムを利用して、マスコットの運用中に一度だけホッピングによる移動も計画されています。