任意同行に応じる細谷健一容疑者＝２０２３年８月、東京都台東区

　東京・浅草で旅館を経営していた夫婦が有害成分「エチレングリコール」で家族を相次ぎ殺害したとされる事件で、同様の手口で夫の母も殺害したとして、警視庁浅草署捜査本部は22日、殺人容疑で、元会社役員細谷健一（43）、妻志保（38）両容疑者＝いずれも殺人罪で起訴＝を再逮捕した。 【ひと目でわかる】細谷健一容疑者一家の相関図 　黙秘しているという。 　両容疑者は2月以降、次女や夫の父、姉に対する殺人容疑で立件されており、逮捕は4度目。捜査本部は嫁しゅうとめの不仲に加え、旅館の経営権を乗っ取る目的で家族を次々と殺害したとみている。 　再逮捕容疑は2017年8月ごろから健一容疑者の母、八恵子さん＝当時（68）＝にエチレングリコールを摂取させ、18年1月21日に殺害した疑い。 　八恵子さんは当時、慢性腎臓病や糖尿病を患い、週に3回ほど人工透析を受けていた。症状は安定していたが、17年9月に救急搬送されて入院。その後退院することなく、吐血や嘔吐（おうと）による気道閉塞（へいそく）で死亡した。 　捜査本部が搬送直後の検査結果を調べたところ、エチレングリコールの摂取を示す数値が上昇していた。入院中も同様の変化が確認されており、捜査本部は両容疑者が差し入れの飲食物に混ぜて摂取させたとみている。 　エチレングリコールは繰り返し摂取すると、全身の機能障害が生じるという。医師は八恵子さんについて、反復摂取により同容疑者の父勇さん＝同（73）＝と同じ国指定難病「再生不良性貧血」を発症し、死亡につながったとの所見を示したという。 　両容疑者のLINEには志保容疑者と八恵子さんの不仲をうかがわせるやりとりが残っていた。 　八恵子さんは勇さんが創業した革製品の会社「ホソヤ産業」で役員を務め、経理などを担当した。知人女性によると、「おしゃべりで、にぎやかな人だった」といい、両容疑者について「孫はかわいいけど、息子夫婦はよく分からない」と漏らすこともあったという。 　事件は23年3月、両容疑者の次女美輝ちゃん＝同（4）＝の死亡をきっかけに発覚した。警視庁は今年2月、体内からエチレングリコールが検出されたとして、殺人容疑で両容疑者を逮捕。その後、18年4月に健一容疑者の姉美奈子さん＝同（41）＝を、同年6月に勇さんを同様の手口で殺害したとして再逮捕した。