コロナで解雇を告げられた人たち 電機、ディズニー、飲食店──それぞれの苦悩
突きつけられた三つの選択肢
当初、3月15日までだった休園は6月末まで延長された。休業補償は3月から9月末まで、通常勤務時の8割まで引き上げられた。ただし、鈴木さんは休業補償を6月末までしかもらっていない。7月1日からの営業再開でキャラクター出演者として復帰することになり、休業補償から外れることになったからだ。 園は再開したものの、入場者数は1日1万5000人程度に絞られることになった。出演者の労働時間も大きく削られ、鈴木さんのキャラクター出演は週2~4日と制限された。その影響で、6月末までは休業補償で約15万円ほどだった月収が、7月以降は8~12万円ほどに減った。
9月初旬、オリエンタルランドはダンサーやキャラクター出演者に対して、三つの選択肢を提示した。一つ目は契約の継続で、契約満了日の2021年3月末まで雇用は続くものの労働時間は短縮する(キャラクター出演者の場合、月50~100時間)。二つ目は準社員として再入社し、販売や窓口などへ職種転換。三つ目は会社からの退職支援金80万円を受給したうえでの9月末での退職だった。三つの選択肢は労働者を守っているようにも映ったが、内実はもっと厳しかったと鈴木さんは語る。 「たとえば、二つ目の『職種転換して準社員としての再入社』ですが、ダンサーやキャラクター出演者は最低時給の930円からやり直すことになるのです」 鈴木さんをより不安にさせたのは、出演者契約を継続するにしても、職種転換して働くにしても、4月以降、キャラクター出演ができる確約がないことだった。
鈴木さんは18歳から年1回開催される4次審査まであるオーディションを受け続け、5年以上経ってキャラクター出演者の資格を得た。合格通知を見たときは泣いて喜んだ。だが、30代となったいま、あのオーディションに受かるのは「まず無理」と認識している。もし3月末で契約が切られた場合、再びキャラクター出演の仕事に就こうとしても、一からオーディションを受けなければいけない。だからこそ、4月以降、優先的にキャラクター出演ができる確約を求めているが、それは得られていない。 「メール内に『皆さんの出演場所を提供できない』という文面がありましたが、私たちを切りたいとしか思えませんでした」 結局、鈴木さんは「出演者契約の継続」を選び、残る選択をした。併せて翌10月から、オリエンタルランド以外の場で日雇いバイトにも登録した。工場で一日ラベルを貼っている日もあれば、目の前を流れてくる段ボールにせっせと荷物を詰める日もある。日給は約8000円。「ディズニーのような楽しさもないので、正直きつい」とこぼす。 コロナ禍で変転してきた日々を過ごすなか、「夢の国」への幻想を失ったという。 「会社は新しいアトラクションやホテル改築には何千億円も投資しますが、自分たちのような存在は使い捨てなんだなと。そんな感覚は漠然と抱いていましたが、今回のコロナによる休園ではっきりしたように思います」