コロナで解雇を告げられた人たち 電機、ディズニー、飲食店──それぞれの苦悩
本社からの解雇通告
小学生の息子と妻と暮らす高橋さんが同社に転職したのは2015年のこと。過去に居酒屋チェーンで店舗マネージャーの経験もあり、店を任されるのも早かった。だが、コロナで事情は一変した。3月下旬、高橋さんより10歳近く若い本社の営業部長が、開店の1時間ほど前に店に現れると、「存続が危ないかもしれません」と告げてきた。高橋さんが振り返る。 「各店舗によって対応は違うものの、うちの店は一時的に閉める可能性が高いと営業部長に言われました。その前にまずこの店舗の調理担当を1人減らすことになるが、それは私から言ってほしいとも。調理担当は20代後半で仲が良かったので、この通告は心理的に重かったです」 高橋さんが「本社の判断」として調理担当に解雇を伝えると、「高橋さんは大丈夫なんですか」と逆に心配された。私もわからないと答えたが、4月下旬に再び営業部長がやって来た。 一時的な店舗の休業の通達とともに、「たいへん苦渋の決断ですが、経営破綻を免れるために解雇とさせてください」と頭を下げられた。そのとき、高橋さんは意外と落ち着いていたという。 「ニュースで厳しい状況の人を多く見ていたし、自分が調理担当者に解雇を申し伝えなければいけなかった経験も大きい。彼に伝えた仕打ちを自分が受けるのは、仕方ないことだろうなと思っていました」
高橋さんは退職後、物流の世界に飛び込み、現在は介護事業の契約社員として働いている。飲食業に長く従事し、こだわりもあったが、コロナの収束が見込めない以上、待っていることはできなかった。正社員を目指しながら、この変化を前向きに考えようとしているという。 「コロナ禍でエッセンシャルワーカーという職種が注目されました。どうすれば世の役に立つのかというのは、どうすれば食っていけるのかということにも近い。家族もいるので、まず身を守ることに集中したいと思います」
計算上は7.5万人の失業者発生
今年1月7日、緊急事態宣言が再発令された。東京都など1都3県は1カ月間、飲食業などの営業時間の短縮、不要不急の外出自粛などを要請した。これにより、当然、経済へのダメージは大きくなる。再発令によって通常時に比べて最大マイナス1.7兆円の家計消費が減り、GDPベースでは最大マイナス1.4兆円の損失が生じると第一生命経済研究所経済調査部・永濱利廣氏は見ている。