コロナで解雇を告げられた人たち 電機、ディズニー、飲食店──それぞれの苦悩
「ワンマン社長のもと、長時間労働や責任の重圧で過労死するんじゃないかと思っていました。腰痛もひどく、ストレスによる睡眠障害もあって体はボロボロだったんです」 草木さんは通告を受け入れ、5月末で会社都合退職となった。現在、失業手当は月額約20万円。解雇から半年以上が経過し、起業も視野に入れつつ就職活動をしているが、まだ再就職できていない。 「面接には行っているのですが、自分の持病を心配され、『うちでは厳しいかもしれません』と断られる。コロナ禍で健康面が重視されているからでしょうか。失業手当が切れる3月までに何とかしないと……」 いまは友人に送ってもらったカロリーメイトと野菜ジュースを栄養にし、一日一食の日が続いているという。
総務省統計局の労働力調査によると、2020年11月時点の完全失業者数は195万人にのぼる。10カ月連続の増加で前年同月に比べ44万人も増えていた。「相談村」実行委員の棗一郎弁護士は、2008年のリーマン・ショックでは派遣切りが横行したが、今回のコロナ禍でも解雇しやすい非正規や派遣労働者を「雇用の調整弁」とする構図は変わっていないという。 「民主党政権の2012年に、派遣労働者を簡単に切れないよう日雇い派遣の原則禁止など労働者派遣法はいったん規制強化されました。ですが、コロナ禍のなか、やはり正社員より解雇しやすいアルバイトやパートといった弱い立場の人が、真っ先に声をかけられています」
夢の国での仕事が一変
苦しむ非正規労働者の中には、日本を代表するエンターテインメント施設で働く人もいる。 「ディズニーが大好きなので、いろいろな感情を抑え込んで仕事をしてきました。でも今回の休園で冷静になって立ち止まると、夢だけでは生きていけないんだなと思いました」
東京ディズニーランドで、ミッキーマウスなどの着ぐるみを着てショーやパレードに出演するキャラクター出演者を10年以上続けてきた鈴木花さん(仮名、30代)。ダンサーにはプロダクションに所属している人もいるが、鈴木さんはディズニーランドとディズニーシーを運営するオリエンタルランドとの直接雇用で、年間契約のアルバイト(準社員)だ。 テーマパークは政府から自粛要請も出されたため、ディズニーランドとディズニーシーは昨年2月29日から3月15日まで臨時休園となった。ただ、鈴木さんには会社から休園の連絡はなかった。 メールで連絡があったのは休園開始から2週間後のこと。それまで働いていた月給の6割は保障しますという休業補償の内容だった。メールは「読みました」というボタンを押すと、メールが表示されなくなってしまうシステム。一度しか読めなかったが、生活が厳しくなるというのは感じていた。 「私はそれまで週5日の勤務でした。時給1100円から始めて10年以上かけて1500円まで上がりました。それでも月収は20万円ほど。その6割となると、生活は相当厳しいだろうなと思いました」