欧州経済の大黒柱「ドイツ経済」がトランプ復活でさらに悪化する3つの理由、2期目のほうがより”危険”だ
ドイツのオラフ・ショルツ首相は与党連合の崩壊を受け、11月11日から開催される国連の気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に出席しないことを明らかにした。気候変動対策の世界最優等国を自負するドイツ首相の欠席は、今のドイツを象徴する出来事だ。一方、欧州連合(EU)議長国のハンガリーのナショナリスト、オルバン首相はシャンパンでトランプ氏勝利を祝ったという。 ショルツ氏が連立を組む「自由民主党(FDP)」党首のリントナー財務相を解任したことで、連立政権が過半数割れし、政権が崩壊。国家は政治危機に陥っている。地盤沈下するドイツ経済の立て直しが急務な中、保護主義を主張するトランプ大統領の登場はどう影響するだろうか。
■ウクライナ侵攻で環境が激変した 気候変動対策で合意した中道左派「社会民主党(SPD)」、環境政党「緑の党(Grüne)」、リベラル政党「自由民主党(FDP)」と連立政権を発足させたのは2021年末。ところが翌年2月、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツを取り巻く環境は激変した。 連立政権は侵攻当初、ウクライナにヘルメット限定の支援を表明して顰蹙を買い、その後供給したのが第2次世界大戦で使用した倉庫に眠るさび付いた武器というありさまで、国内だけでなくヨーロッパ内にも困惑が広がった。
こうした中、2021年時点で防衛費をGDP比1.1~1.4%に抑えていたドイツは、翌年、北大西洋条約機構(NATO)の要求に応え、2024年末までにGDP比2%に相当する717億ユーロ(約12兆円)の防衛予算を計上した。 ただ、防衛増額を確保するには財政赤字をGDP比3.5%未満に抑える必要があり、経済政策で意見が異なる連立3党政権を揺るがした。さらに来年度の予算審議を控えた現在、防衛費増額でも「債務ブレーキ」の遵守に必要な90億ユーロの財政の穴埋めで対立が深まった。