欧州経済の大黒柱「ドイツ経済」がトランプ復活でさらに悪化する3つの理由、2期目のほうがより”危険”だ
結果、リントナー財務相がショルツ首相と意見が合わず、財務相解任。もっとも政権崩壊の最大のきっかけとなったのは、ドイツ経済にとって救い主とされたアメリカ半導体大手、インテルがドイツに300億ユーロ規模の巨大な半導体工場を建設する計画を棚上げしたことが大きい。 延期理由はインテル側に負うところが大きいが、トランプ政権誕生で、インテルはアメリカ国内工場拡張に舵を切った形だ。3000人の新規雇用を見込んでいたドイツ政府がパニックに陥ったことは、政権維持に深刻なダメージをもたらした。
■再浮上するアメリカ「NATO脱退」リスク ショルツ氏が政権引き延ばしに動く一方、FPDは内閣不信任が可決される前に連立政権の退陣と早期解散、総選挙を行うことを強く要求している。それでも連邦議会選挙は最短で2月に前倒しすることしかできず、トランプ政権発足には間に合わない。 与党返り咲きの可能性の高い最大野党で中道右派の「キリスト教民主同盟(CDU)」とバイエルン州の姉妹政党「キリスト教社会同盟(CSU)」も圧力をかけている。
せめぎ合いが続くドイツだが、トランプ再選は経済的に3つのマイナス要因となる可能性がある。 1つは、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)脱退リスクである。アメリカはNATOへの拠出金で突出しているが、トランプ氏は第1期政権でNATO加盟国の分担金増額を迫った経緯があり、今回の大統領選でも「自国を、本腰を入れて守る気のない国をアメリカは守らない」と発言している。 NATOは今年4月、大統領選に左右されない向こう5年間の、最大1000億ドルに上るウクライナ軍事支援計画をまとめた。欧州議会は最大350億ユーロを承認しているが、実際の拠出額は加盟国間の協議を踏まえて決めるため、ドイツの負担が増すのは必至と見られている。ウクライナ紛争で提供した武器、訓練、防空支援、人道支援などの総額は、2023年までに約1130億ドルとも見積もられている。