介護離職を減らすための備え 個人や職場ができる具体策は
■仕事の属人化をなくすには
ワーク・ライフバランス社では、朝出社した時点で、予定とともに顧客の特徴や進捗も共有します。帰宅時には今日の仕事の共有を全員にしますが、そこに結構プライベートの情報も入れます。私も「最近母の引っ越しの準備があって」とか、「土曜日も母の家を訪ねた」などと伝えています。そうすると「今日は早めに帰って大丈夫よ」と気にしてくれたりします。 とにかく、退職を決意してからでなく、介護などの事情について、早めに職場に相談することが大切です。上司は、例えば部下が土日ごとに実家に帰っているのであれば、月曜日遅めに出社でいいよ、などと、部下の健康を考えていただけるといいですね。調整は大変ですが、部下が辞めてしまうよりは、心身とも健康で仕事を続けられることが組織にとってもプラスなはずです。
■誰もが事情をかかえる時代に
働き方全体でみると、人口ボーナス期と人口オーナス期があって、人口ボーナス期は働く世代が多く、高齢者が少なくて経済発展は当たり前、早く安く大量の製品を作る形ですが、この時期は日本では1990年代に終了。今は人口オーナス期で、知的労働の比重が多く、他社と違う価値を生み出すことが重要です。 多様な商品を生み出すには、性別はじめ多様な人が組織に必要です。例えば介護について知っている人がいれば、そのニーズを察知し、必要な商品やサービスを生み出すことができます。 労働力人口が少なくなる中、介護や育児など事情がある人を排除してしまっては、組織が生き残れないので、事情がある人をいかに活用するかが鍵です。以前は、長時間働ける人が主で、子育てや介護など制約がある人が少なく、残業できない人の仕事を長時間働ける人にのせることで仕事を回し、長く働く人を評価する形でした。 しかし、今は男女ともに育児や介護を担い、学び直す人や障害や持病がある方もいます。24時間働ける人に大量の仕事をのせていくと、この人たちが心身の不調に陥り、退職にもつながる、つまり、事情がある人もない人も長時間労働をいかに減らしていけるか、真剣に考える時代になっています。