介護離職を減らすための備え 個人や職場ができる具体策は
家族の介護を理由に仕事を辞める介護離職が増えています。仕事を辞めずに介護と両立するためにできることを、自らも介護経験があるワーク・ライフバランス社のコンサルタント、大西友美子さんに聞きました。
■介護は急に始まることも多い
高齢者の元気が徐々になくなり介護が始まると思いがちですが、実は、脳卒中や骨折などで突然介護が必要になることが多いんです。 そして、介護に専念するために退職や休業し、介護が終わったら復帰すればいいと考える人もいますが、介護の期間は平均5年1か月と言われていて、完全に仕事を辞めてしまうと、復帰はなかなか難しいかなと思います。法定の介護休業は93日。足りないという方もいますが、これは、介護と仕事を両立する準備をする期間だと考えてほしい。 まずは、地域包括支援センターに連絡し、介護認定を受ける必要があります。高齢者本人と面談し、要支援や要介護度を決めてもらいます。日程調整も大変ですし、親が「会いたくない」と言うとか、面談で突然、シャキッと元気に回答し介護度が軽めに出て、「いや、本当はもっと重いんです」などと押し問答をしている間に、2、3週間たってしまう。スマホや部屋にとりつけるカメラなどで日常の様子を撮っておき、それを支援センターの人に見てもらうこともおすすめです。
■介護離職するとむしろ心身の負担が増す
介護を理由に離職した人のアンケートでは、経済的負担だけでなく、精神面や肉体面でも負担が増したという回答も多い。仕事との両立が大変と思われるかもしれないが、仕事を辞めると収入がなくなり、一人でいられる時間が少ないなどストレスが溜まる。ですので、仕事を辞めずに、介護の様々な制度を使い、自分のできる範囲内で、介護に携わるのが理想的かなと個人的には感じます。 75歳以上の人のうち、要介護認定を受けた人は3割を超えます。あなたに仮にパートナーがいるとすると両親は4人、その3割だと1.2人、つまり1人は介護が必要になるということです。 同時期に4人の介護が必要になるとか、独身のおじ、おばや祖父母の介護もあり得ます。パートナーがすでに親の介護をしていて、これ以上頼れない可能性もあります。 つまり、誰もが介護の準備と情報収集をしておいて損はないと思います。「こどもに面倒をかけたくないから施設に入る」という高齢者もいますが、実は施設も足りない。希望しても介護施設に入れない高齢者が多くいます。(厚労省調査2022年4月時点、全国で約25万人)