一流のマネジャーほど“内省”している...リーダーシップを鍛えるプロセス
経験学習モデルとオフ・ザ・ジョブの内省
経験から独自の知見を紡ぎだす理論として、デイヴィッド・コルブが提唱した経験学習モデルがあります。その考え方は、実際に現場で体験する「経験」、その経験をリフレクションする「省察」、得られた学びをより応用範囲の広い形に抽象化する「概念化」、その概念を新たな場面で応用する「実践」、そしてそれが次の「経験」へと学びが連鎖していくものです。 よく経験か知識かという二者択一で議論がなされがちですが、その双方が重要であることは改めて認識しておくべきかもしれません。米国のロミンガー社によれば、リーダーシップが発揮されるまでの学習の要素としては、体験が7割、上司や顧客などからの薫陶が2割、研修やセミナーなどによる学習が1割を占めるとされています。割合の正確性はわかりませんが、おおむねこのようなウエイトであることは理解しておくと良さそうです。 私はこの記述から、ほとんどのビジネスパーソンは圧倒的に長い時間を業務に費やしているので、他者からの薫陶や自分でできる学習やセミナーの受講などに、もっと時間を費やしてよいと感じます。働き方が柔軟化して、人とのリアルの場、そしてリアルタイムでの関わりが薄くなりやすいので、積極的に他者から学べる仕組みを取り入れていくことが望ましいでしょう。
修羅場経験を補完する越境学習
人材育成のコンテクストでよく語られるのが、修羅場経験の重要性です。たしかに人はより追い込まれた状況で腹がすわり、一皮むけた自分に目覚めることが多いようには思います。では修羅場を経験しない人は学べないのかというとそのようなことはありません。 バブル崩壊後の長期にわたる経済の低空飛行を経て、今のビジネスパーソンは終わりのない修羅場にいるとも考えられます。そして、より学習しやすい場として、普段の職場から離れた場所での「越境学習」が修羅場経験を補完するという考え方に、希望が見いだせます。 AIの世界でも、学習していない領域のデータによるモデルの学習効果は大きいとされています。また、ある程度すると学習が飽和し、同じデータで学習しすぎるとそのデータに過度にフィットさせてしまう過学習となり、むしろ新しいデータに適さなくなる、つまり性能が悪化するところも、人の学習との類似性が見出せます。新しい環境における学びを増やすために、組織を超えた学びを促す越境学習は望ましい動きと言えるでしょう。