一流のマネジャーほど“内省”している...リーダーシップを鍛えるプロセス
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 「管理職の罰ゲーム化」が加速する日本の職場...その原因とは? 今回、紹介するのは『リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する』(中原淳、金井壽宏著、光文社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
マネジャー活躍の魔法の杖はなく、その成長が組織を支える
まるですべての課題をマネジャーが解決するかのように語る人は多くいます。「メンバーをモチベートできないのはマネジャーのせい」「業績目標が達成できないのはマネジャーのコミットメント不足」「退職者が多いのは、マネジャーの厳しい指導のせい」といったように、マネジャーに対する批判は尽きることがありません。 イノベーションを生み出す主体としてもマネジャーへの期待は高まるばかりです。さらに、多様な人材の活用やハラスメントの抑制などといった、過去の管理職が経験してこなかった新たな経営課題も加わり、マネジャーの仕事はより難しくなっています。 トップマネジメントによる強烈なリーダーシップをとりにくい日本の組織では、ミドルマネジャーはより重要な役割を担います。その対策という名のもと、反射的にマネジャー育成に向けた予算確保と研修会社への丸投げをするだけでは、真のミドルマネジメントの強化には心もとないと言わざるをえません。そのような状況を改善するためには、人材育成への深い洞察を経た育成方針が求められます。 本書は人材育成や組織開発の領域の第一人者である2人の著者により、2009年に出版されたロングセラーです。現代の人材育成の潮流の基盤を知るために、まず参照したい作品と言えるでしょう。
成長に寄与する内省支援
人々がもつ成長実感の因子分析から、「業務能力の向上」「他部門理解の促進」「部門間調整力の向上」「視野の拡大」「自己理解の促進」「タフネスの向上」の6つが重要だと認められたといいます。 これらの6つの要素がどのような関わりから得られているかを調査したところ、6つすべてに対して内省支援が大きな影響を持っていることがわかっています。なお、内省支援の影響の大きさは、業務支援や精神的支援との比較で論じられています。 それらの成長実感やモラールの改善に寄与する関わり先は、同じ職場内の人に加えて「社外」が有効とされています。一人前になった後では、「自分はひとりで学んで一人前になった」と考えてしまいがちですが、実際は他者に助けられながら成長していることが示唆されます。そして業務上の具体的な内容よりも、自身の体験を振り返る内省を支援されたときに成長が得られやすいとされています。 ここでも度々登場している内省(リフレクション)の意味を確認しましょう。『リフレクション』の著者である熊平美香氏によると、「成功しても、失敗しても、いずれにしても、経験したからこそ知っていることがある、経験を知恵に変えることができる」という信念に基づくものとされています。 変えられない過去の反省と責任追及をする「反省」とは異なり、本来のありたい姿に近づくために何をすればよいかを明らかにするのが「内省(リフレクション)」です。そのリフレクションはより多面的になされることが望ましいため、他者による支援が有効なのです。