ホンダ、2モーターハイブリッド「e:HEV」の次世代技術発表 「ハイブリッド車の開発を間断なく進めている」と強調
本田技研工業は、独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」の次世代技術についての説明会を開催し、ハイブリッド事業やe:HEVの進化の方向性、今後のハイブリッド車に搭載する次世代技術などについて語った。 【画像】本田技研工業株式会社 執行役 四輪事業本部長 林克人氏 ホンダでは2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、「2040年にEV・FCEVの販売比率100%」とする目標を掲げ、2020年代後半以降に訪れるEV普及期を見据えた中長期的な視野に立ち、強いEVブランド、事業基盤の構築に取り組んでいる。 その一方で、2020年代中盤までのEV移行期における足下市場では引き続きハイブリッド車に対する需要が高く、今回の説明会ではこれに対応する新たなハイブリッド車の開発を間断なく進めているという点が強調された。 e:HEVは燃費のよさ(環境性能)と高出力モーターによる上質で爽快な走り(走行性能)の両立を実現する、独自の2モーターハイブリッドシステム。現行システムから次世代システムへの刷新ではこの強みをさらに磨き上げ、より魅力的なラインアップを通じた「五感に響く移動の喜び」を提供していく。 これにより、グローバルにおけるハイブリッド車の販売計画は2030年までに年間130万台を目指すとともに、生産効率の向上、コスト低減により高い収益性を確保し、将来のEV事業を支える基盤事業としてさらなる事業成長を図っていく。 ■ 次世代 e:HEVシステムの概要 e:HEVは、バッテリ電力のみで走行する「EVドライブモード」、エンジンで発電しモーターで走行する「ハイブリッドドライブモード」に加え、エンジンとクラッチを直結してタイヤを駆動する独自の「エンジンドライブモード」の3つのモードをシームレスに自動で切り換えることで高効率な走行を実現する。 次世代 e:HEVでは、小型・中型それぞれのシステムにおいてエンジン、ドライブユニットをはじめとする構成部品および制御技術の刷新を行ない、環境性能と走行性能のさらなる向上を目指す。 具体的には1.5リッター/2.0リッター直噴アトキンソンエンジン、フロントドライブユニットおよび統合冷却システムをそれぞれ新規開発し、次世代中型プラットフォームとの組み合わせによって10%以上の燃費向上を目指していく。 エンジンは今後のグローバル環境規制への対応も踏まえ、出力を低下させることなく、日常での走行から高速道路での合流など強い加速が必要な場面まで、全領域において理論空燃比を実現し、出力性能と低燃費を両立する。また、1.5リッターエンジンはトルクと回転数のバランスにおいて、エンジン回転数が高効率となる領域を現行に対して40%以上拡大し、大幅な燃費向上を実現していく。 フロントドライブユニットは、パッケージングの小型化と高効率化と両立。また、小型・中型ドライブユニット双方における共通部を最大化することでコストを大幅に低減する。 これに加え、各ドライブモードにおけるエンジンやモーターの高効率化を図っていく。エンジンドライブモードではエンジン直結時のトルク伝達効率の向上に加え、走行中のバッテリアシスト活用により、高速クルーズ時の高効率なエンジンドライブモードの活用幅を拡大し燃費向上を図る。さらにEVドライブモード、ハイブリッドドライブモードについても電力変換およびエンジン効率の向上を図っており、エンジン燃焼効率は1.5リッター/2.0リッターともに最高効率を実現するという。 ■ Honda S+Shift(ホンダ エスプラスシフト) e:HEVの特性を生かしながら、ドライバーとクルマの一体感を際立たせる「操る喜び」を追求した新機能「Honda S+ Shift」を新たに追加。HEVならではの高い環境性能はそのままに、加減速時に緻密にエンジン回転数をコントロールし、ダイレクトな駆動レスポンスと鋭い変速を実現する。Honda S+ Shiftは、2025年に発売予定の「PRELUDE(プレリュード)」を皮切りに次世代 e:HEV搭載機種に順次搭載していく。 ■ 電動AWDユニットの採用 EVと共用可能な電動AWDユニットを次世代 e:HEVシステム搭載モデルから採用する。機械式AWDと比較して最大駆動力を向上し、力強い発進加速の実現に貢献。また、機械式AWDで培った前後駆動力配分制をさらに進化させ、加減速や旋回時のタイヤの接地荷重変化を捉え、駆動力配分を最適化する。 これに加え、高精度で応答性の高いモータートルク制御を緻密にコントロールし、さまざまな路面状態でライントレース性や操縦安定性を向上し、より安心で意のままの走りを実現していく。 ■ 次世代中型プラットフォームの採用 次世代 e:HEVシステムの進化にあわせ、ハイブリッド車向けプラットフォームも全面的に刷新し、さらなる進化を追求していく。 具体的には、高い操縦安定性と軽量化を実現する新しいボディ剛性マネジメントを採用。コーナリング時に車体をしならせる挙動を与え、タイヤへの荷重をコントロールする新たな操縦安定性の指標を採用することで、軽快で気持ちのよい走りを実現。 また、新設計方式や新軽量骨格ボディなどの採用により、重量を現行モデル比で約90kg軽量化し、クラストップの軽量プラットフォームを目指す。さまざまなモデルにおいて高い共用率を実現するモジュラーアーキテクチャー構想により、エンジンルームやリアアンダーなどの共通部と、リアキャビンなどの独自部を作り分け、シリーズ開発することで、このプラットフォームを採用する車両において60%以上の共用化を目指していく。 これにより、コストを抑制しながら個性的で多様なモデルを効率的に製造することが可能になるという。 ■ ハイブリッド事業の事業性向上に向けて ホンダは1999年の「INSIGHT(インサイト)」販売開始以来25年の歴史において、ハイブリッド車の商品魅力向上や技術進化に加え、さまざまな生産効率化の施策を図っている。特にバッテリ、パワーコントロールユニット、モーターなどの主要部品を中心に、取引先との協創活動や現地生産体制の構築を通じた生産効率化、モデルをまたいだ部品共用化などの施策により、コスト低減を追求していく。 これによってハイブリッドシステムコストは低減し、現行「アコード ハイブリッド」(北米仕様)においては2018年発売モデル比で25%のコスト低減を実現しており、収益性の改善に大きく寄与。また、2018年発売のモデルに対し2027年発売の同一モデル比で50%以下の車両コスト低減を目指すとしている。
Car Watch,編集部:小林 隆