維新3度目の「分裂」の懸念 吉村洋文知事が前言翻して3度目の「大阪都構想」が始動
大阪府の吉村洋文知事が代表を務める地域政党の大阪維新の会が、過去に2度住民投票で否決された「大阪都構想」の再検討を始めた。過去の看板政策を持ち出して維新の党勢低迷を打破したい思いが見えるが、党の分裂を招きかねないと懸念する声も出ている。 【写真】維新が分裂前、国政で躍進したころの共同代表2人のツーショットはこちら 「大阪都構想」を検討するプロジェクトチームのリーダーとなった高見亮大阪市議は、12月19日に会見でチームの立ち上げを発表し、 「吉村新代表のもと、副首都にふさわしい大阪を作っていくために、もう一度『大阪都構想』を見つめ直そうということになった」 と説明した。 「大阪都構想」は、大阪の市と府の「二重行政」をなくし、東京に並ぶ副首都として大阪を発展させるとして維新が掲げた政策で、維新の創立者で元代表の橋下徹大阪市長(当時)のもとで2015年5月に住民投票を実施したが否決された。20年11月には大阪維新の会の松井一郎元代表、府知事で代表代行だった吉村氏のもとで再度住民投票をして、やはり否決されている。 ■「やりきった」と語っていた吉村氏 吉村氏は2度目の否決が決まった際に、 「やりきったという思いがある。僕が政治家として都構想を掲げることはありません」 と語っていた。 しかし、大阪維新の幹部は党の内情をこう話す。 「大阪都構想という看板政策が水の泡となって、維新は迷走しました。『身を切る改革』というあいまいなキャッチコピーで勢力を拡大させてきたが、10月の衆院選で惨敗し、執行部が総退陣した。党勢が伸びない中で『大阪都構想を復活させるしかない』という方向性になった。これを機に『大阪都構想』をやり遂げ、維新の党勢をまた回復させたい」 立憲民主党の米山隆一衆院議員は、かつて維新に在籍し、大阪都構想の住民投票で「賛成に1票を」と活動した経験もある。その経験を踏まえたうえで、こう話す。 「維新は『身を切る改革』と言いながら、大阪都構想の2度の住民投票では、大阪府と大阪市で関連予算が約100億円も使われています。大阪都構想の活動の中で、橋下氏が様々なデータを手にして、『維新が大阪を変えた。大阪都構想が実現すればさらに大阪はよくなる』と訴えていたのを横で聞いていました。しかし、パネルにしたグラフは、データを過剰にしたとんでもないものでした。党の風向きが悪くなると維新が大阪都構想を持ち出すのは、党利党略、自分たちのためで、府民、市民を無視している」